以下はファイナンスの関与の半分しか指摘していない。

[R30]: ファイナンスした人が責任取れば?
gskay氏が書いているように、問題の本質は「違法な建築のはずの建物が、基準に合致していると判を押され、それを正しいと思って金融機関が購入者たる住民に住宅ローンを融資、つまり信用を供与した」ことなのである。ここでもし違法な建築であるということが分かっていれば、カネのやり取りはヒューザーと建設会社や設計士の間、つまり業者同士だけで終わっていたはずなのだ。建築確認が通ったということが、金融機関にファイナンスを可能にさせ、住民がそれを買うことを可能にした。つまり被害を一般人にまで広げた。

マンションは、開発段階からファイナンスで行われるのだ。

自己資本で土地を購入し、建物を建てる殿様商売をしているデベロッパーなどまずない。最初に借りるのは、買主ではなくデベロッパーだ。その時の担保は、当然マンションを建てるべき土地とまだ完成していない建物。デベロッパーはそれを分譲することで借金を返済する。だから、貸し手側には二度も物件を検証する機会があったのだ。しかも一度目の審査は、額も大きいため本来ずっと厳しい検査がなされて然るべきなのだ。

よって、貸し手側の責任は問われて当然ともいえるし、それを怠れば

逆にこういう処理ができず、今回も公的資金を投入とか意味不明のスキームで決着するようだとしたら、日本の規制緩和なんて全部嘘だ。

ということにもなる。

具体的なUndoの方法としては、以下の段階が考えられる。

  1. まず、住民との売買契約を「なかったことに」する。住民は物件をデベロッパーに「返還」し、デベロッパーは代金を「返済」する。この段階での金融機関の役割は二つ。一つは、この措置が円滑に行われるようデベロッパーに短期資金を融通する事。そして住宅ローンで支払われた金利分を住民に返還する事。もちろん住民はデベロッパーから返済された元本分を金融機関に返済する必要がある。行政はこの措置の監視と、住民の立ち退き先の確保を行う。あ、再登記費用を弁済するぐらいのことをしてもバチは当たらないかも知れない。

    これで、マンションは分譲以前の状態に「戻る」。

  2. ここから先は、デベロッパーと銀行とのやりとりになる。デベロッパーが倒産して銀行は貸倒引当金を積むのもよし。あるいはデベロッパーをリストラした上で建物を建て直し、再分譲するのもよし。
    業界全体で150億程度の授業料、安いものである。

    しかも努力次第で減らせるかも知れない。禿同である。

  3. しかしこれで終わらせては付け焼き刃である。
    そして、日本の最大の問題は、こういう事件が起こったときに真っ先に個人の一般消費者を保護するというルールが、そもそもないことだ。
    一応は瑕疵担保条項を盾に取る事も出来るが、現在法律が規定する最低限の瑕疵担保条項は今回のようなケースを想定していない。立法の仕事が本格化するのはここからだろう。せめて自動車などなみの「建築PL法」は必須だと思われる。

これでは「住民は責任も負わないのか」という意見も出るだろう。しかし、住民は今までの生活設計を「なかったことにされる」のである。これだけでも充分な責任だと考えられる。実際に住居を失うという機会損失はそれだけで個人にはかなり酷だ。「バベル」のおかげで久しぶりに「放浪生活」をしてこのことを実感しなおした。当然無償供与したわけではなく、条件としては遥かに恵まれているのだが、それでもわずか3週間あまりの立ち退きが正直結構こたえた。火事で家を焼け出され、都内だけでこの10年あまりで5回の引っ越しを経験した私にしてからこうだ。「一般人」には充分な「お灸」ではないのだろうか。

さて、その我が家もいよいよ本日返還される。今回の「犠牲者」の皆さんの多幸を願いつつ、久しぶりの我が家を堪能させていただくことにしよう。

Dan the Vagabond