むしろ量的緩和解除は、二極化をさらに押し進めるのではないだろうか。

ちょーちょーちょーいい感じ: 量的緩和解除でも二極化は解消されない
と聞いてくださったのですが、残念ながら今回の量的緩和解除では二極化は解消されません。ただ、二極化のスピードを緩めるという意味では今回の解除は意味があると思います。

結局なんで量的緩和していたかといえば、金利をもうこれ以上下げようがないから。ここまで金利を下げても借りてくれなかったから、単に「お安くなってますよ」ではなく、「いくらでもお貸ししますよ」というが量的緩和。

それで、今回の措置は、その後者の「いくらでもお貸ししますよ」というのがなくなったということ。

そうなると、どうなるか?

借り手の信用による差がさらに大きくなる。

今度は貸し出せる量に限りが出てくる。金利は低いまま。誰に貸すか?リターンが同じなら、当然リスクが低い方を選ぶに決まっている。すなわち金持ち。

それでも貧乏な人が借りるにはどうしたらいいか?金利を余計に支払うしかない。いきおい、現金を担保に1%弱で借金してそれを運用できる人と、サラ金で3割近いお金を借りるしかない人々の差はさらに広がることになる。

一般的に、金利が上がる、すなわち資金調達コストが上昇する局面というのは、すでに資金を持っているものに有利になる。その逆もまた真なりで、金利が下がる局面では、資金を持っていることの優位性が減少する。実際この低金利の中で、一番割を食ったのはその運用益に頼る人々だったではないか。高金利の時代にはただ定期預金に預けておくだけで充分な利潤が上がったのに、今は同じ利潤を上げるためにはもっとリスクをとらなければならない。

その意味で、むしろ不思議だったのは金利が低い局面で所得格差が広がった事。ある意味貧乏人はチャンスを見送ってしまった、あるいはチャンスを活かしている者達を指をくわえて見送らざるを得なかったわけだ。

その背景には、量的緩和とはいいつつも、その恩恵を受けられたのは金融機関までで、市井の人々には回りにくかったということがある。住宅ローンぐらい額が大きいとそのありがたみは実感できるが、サラ金で年利3割を払っているにはどこふく風だろう。

結局、貸金というのもまた商品であり、そしてそうである以上市場経済のメカニズムで流通している以上、貧乏人にご利益がまわってくるのは常に最後で、そして損失が回ってくるのは最初ということには変わりはない。

だから、金利の動向というのは経済全体の動向は左右することはできるけど、所得分配のしくみにはさほど影響を与えない。二極化を回避したかったら、別の手を考えねばならないのだ。少なくともそれは金融の仕事ではないと思う。

Dan the (Debt|Credit)or