最近「スケールフリーネットワーク」という言葉が飛び交っている。スケールとフリーが逆転している例もあるけど。
FIFTH EDITION: 二極化とフリースケールネットワーク社会・経済のスケールフリーネットワーク化により より、強固なネットワーク形態となる。
しかし、Web2.0はとにかくスケールフリーネットワークはきちんと数学的にも定義された言葉でもある。ここらで一つ基本を抑えてもいいだろう。本書はそういう人のための本である。
その前に、まずはネットワークの定義から。ここでのネットワークというのは実に簡単で、グラフ理論のグラフのことだ。え?ますますわからん?グラフって表を適当に選択してボタンをポチッと押すとExcelが勝手に表示してくれる奴?いいえ。ここでいうグラフというのはそれではありません。
ここで言うグラフは、点と線を結んだもののこと。とにかく世の中にあるものを点と線に置き換えると、それがグラフになる。例えばWebページとリンク。人間と交友関係。点と線になるものならなんでもグラフになる。 論より証拠。本blogでも使っているをクリックして欲しい。これがグラフだ。厳密にはこのグラフは線は結んでいるだけではなく方角もしめしているけど、これをさらに単純な線にして、色も抜いちゃって、点と線のつながりだけを評価の対象にするのがグラフ理論。
このグラフの別名がネットワーク。グラフというとExcelのアレを思い出す人の方が多いし、逆にネットワークという言葉も人口に膾炙しているから、もう「ネットワーク」でいいと思う。以降は「ネットワーク」と呼ぶ事にする。
このグラフ、いろいろなグラフが考えられる。格子もグラフだし、木もグラフだ。でも、現実のネットや人の交遊関係はそうじゃない。それはどんなグラフだろうと、いろいろな人が考えてみた。
その結果出て来たのが、スケールフリーネットワークというもの。どんなグラフ、もとい、ネットワーク?まず頂点の統計とってみる。どの頂点(vertexないしnode)がどれだけの枝(edgeないしlink)を持っているか。するとインターネットや交友関係では、枝の数が倍になるとそれだけの枝を持つ頂点は1/2γになるという性質が見えて来た。例えばγが2なら、十倍の枝を持つ頂点の数は1/100に減る--友人が他の人より多い人は100人に一人---ということになる。これがスケールフリーネットワークだ。
でも、なんでスケールフリーネットワークになるのだろう?そのためにはスモールワールドネットワークを知らなくちゃ。え?スモールワールド?そう。クラスター性がその鍵となる....なんだかわからん?本書を読めばたちどころに疑問氷解です。
本書は、このあたりを豊富な実例とわかりやすい図解で実に明瞭に解説してくれる。その実例の中には、mixiの実勢調査まで含まれていて、とても実学的だ。実学的なのも当たり前で、実はこの分野の最先端は数学者ではなく、文字通りのネットワーク屋が走っている。このことを著者達は実に素直に認めており、それゆえ研究は実際のネットワークを観察し、それにあてはまる特徴を抽出し、理論を組立てた上でそれが観測と一致するかという、いわば観測数学ともいえるものになっている。
インターネットはスケールフリーだとして、なんでそうなるか?スケールフリーだとどんな利点と問題があるのか?ネットワークというものに興味があるあなた、必読です。
Dan the Unstable Hub
追伸: それでも足りない人は、このあたりを起点に観測の網を拡げるのがお薦め。ただし、本書を読んでから。
個人的には、「クラスター」よりも「フラクタル」をとっかかりにした方が、初心者には;というよりは文系人間にはとっつきやすいかもしれません。
僕は『複雑な世界、単純な法則』という本を通して、この言葉を知ったクチです。