本書を読んでやっと理解したように思う。

彼は、パレートの法則を半分しか体感していないのだ。

パレートの法則というのは、要は「2割の者が8割を生み出している」というアレだ。そして自己啓発本のおよそすべてが、「その2割になるためにはどうしたらいいか」を書いてある。大前氏の本もその範疇からははずれない。

都知事選に出馬したことからもわかるように、彼は「勝手」(かちて)な人であって「勝頭」(かちあたま)な人ではない(おはちは大きいようだけど)。実際に彼の「残り2割になる方法」というのは、Combat Proven、すなわち「実戦検証済み」の方法ばかりで、その意味で「勝ち組マニュアルライター」としては、最も良心的な作家の一人だと思う。

しかし、彼には理解はとにかく体感は出来なかったようだ。パレートの法則は、「生み出さない8割を取り除いても」なお成り立つのだということを。そう。残った二割がまた二割と八割(取り除く前から見ると4%と16%)に分かれるだけなのだ。そして彼の指南する「勝ち方」は、残り八割について来れるものではないのだ。

彼が好んで取り上げるケースは、「大物」ばかりだ。ウェルチ、リー・クァン・ユー、小沢征爾....それもただ遠くから眺めて論評しているのではなく、実際に彼らとサシで語り、それを自分で消化した上で書いている。それはいいのだが、彼の「生徒たち」は、いつ彼のケースになるのだろうか?

彼はあちこちで教鞭を取っているのだし、その中には充分ケースとなる事例だってあるはずだ。もしそうでなかったとしたら、彼は教師としてはあまりデキがよくなかったということになる。ビッダーズの南場さんとかでも役者不足なのだろうか?

そう。彼は還暦を過ぎた今も、まだ教師であるよりも生徒であり、頭より手が勝る人なのだ。そして悲しいかな、手は頭よりも速く老いる。東京の地価の分析に関しては、うちの近所の不動産屋を取材したがごとく明晰なのに、「ビフォーゲイツ」に「アフターゲイツ」は「こちら側の住民」には失笑以外の何者でもないし、

pp.33
携帯電話にインストールしたグーグルを使って

にorzとなった若き大前ファンも多いのではないか。

彼のように力のある人が老いる事を知らないというのは、実は結構な悲劇だ。いつまでも若くあることを踊に暗に陰に陽に諭されては、物理的に若い者達の居場所はいつできるのだろうか?

彼はいつ「隠居力」の執筆にとりかかるのだろうか。彼にそれができると思っている私は彼に甘いのだろうか?私は彼にはそれも出来るし、そうするべきだとも思う。実際彼はもう15年も前に「遊び心」もものにしている。どちらかというと「若くて健康的な遊び」ばかりなのであるが、それでもちゃんと「遊べる」人でもあるのだ。

そうなって初めて、残り八割にも届く言葉を彼は得るのではないだろうか。

Dan the Concerned Reader Thereof