要はそういうことである。

内田樹の研究室: Why do only fools pay the tax?
昨年度の課税売り上げ高(収入から消費税が課税されない収入を差し引いた金額)が1,000万円を超える事業者は来年から消費税の課税事業者となるから届け出をしろというのである。

結論から言うと、「課税事業者」になるということは、「あなたは税務署外税務署員になります」ということになる。源泉徴収モデルというのは、端的に言えば勤務先=税務署ということなのだ。そして、自分で自分を雇用していれば、自分=税務署員と相成る。この辺は「 源泉徴収と年末調整」に詳しい。当初張ったアフィリエイトはそっちだったのだが、マーケットプレイスでしか手に入らないということで、「源泉徴収」で検索してトップに来たのを代わりに張ってみた。

内田樹の研究室: Why do only fools pay the tax?
私の収入は給与と原稿料と印税と講演料だけである。
そのすべてで所得税が源泉徴収されており、さらに確定申告で新車一台分の税金を追い払いしていることはご案内の通りである。
で、さらに消費税。
そ、それは何ですか?
それは私が給与や原稿料を受け取るときに、「あ、消費税分5%上乗せしてください」と言えってことなのか?

結論として言うと、「自分=税務署」の方がキャッシュフローは楽になる。内田先生が例えば今まで手取りで1000万円に対して100万円源泉徴収され、残り900万円をもらっていたとすると、これからは945万円もらえることになる。もちろん後で45万円税務署に持っていかねばならないが、重要なのはその45万円は後払いだということだ。運用したって構わないのである。

しかも、実際に払う金額は45万円より安い。というのも、仕入れにかかった分とういうのは引いてもいいのである。例えば、消費税込みで210万の売上げがあって、その為に消費税込みで105万の仕入れがあった場合、実際に税務署に持っていくのは10万円でなくて5万円でいいのだ。

「でも、無から有を生み出す作家の仕入れって何さ?」「それじゃ全部仕入れも帳簿がいるの?」という質問が出てくるが、日本はこの点に関しては涙が出るほどうれしい施策をとってくれている。「みなし仕入れ率」なる制度があるのだ。これを使うとその分の帳簿がなくてもOK。作家のような場合でも最低で50%あるので、実際に税務署に持って行く消費税は、上の例だと22万5000円、ということになる。

ただし、課税売上高が5,000万という条件は付く。これより多いと「みなし」は使えない。

要は、税金は後払いの上より多く控除してくれる、ということなのだから、悪い話ではないはずなのだ。

それでも、

税務当局の方々は、良民の勤労意欲納税意欲をかくも劇的に低下させることを通じていったいいかなる国家目的を達成しようと考えておられるのか?

と感じてしまうのは、実際のところ面倒だから。税金分稼ぐだけでも大変なのに、税務署の片棒までかつがんければならないというのは、「ぐだぐだいわず仕事したい」人には耐え難い苦痛でもある。

しかし、金のことゆえ金で解決できる。税理士に全部振ってしまえばいいのである。たいていは帳簿付けまでは自分でやるように諭されるのだけど、頼めば伝票丸投げだってやってくれる。しかもうれしいことに、税理士に払った金額というのは当然経費扱いしてくれる。

私の場合、一応帳簿は用意しておき、それを元に「素人判断で税金はこれくらいになりそう」という金額をプールしておいてから、税理士を呼んで税額を算定してもらうのだが、税理士の経費を引いてもかならずプールした金額よりも、それもだいぶ少なくなる。税金には実に細かいルールがたくさんあるのだが、それらのほとんどが、使うと税金が下がるというものだばかりで、税理士はこれらを縦横無尽に駆使してくれるからだ。

それでも、「税理士は安い」とか「ルールは節税のためにある」だとかは、自分でやってみないとわからないものだ。そういった機会をほとんどの勤労者から奪っているだけでも日本の源泉徴収制度は疑問である。それは税務署を楽にはするし、勤労者の時間を節約はするが、民主主義で一番大事な納税者意識を奪ってしまうのだ。そもそも徴税という国の根幹を、有権者とはなりえない法人にやらせているということにみなさんは疑問を感じないのだろうか。

感じたくない、というのであれば、民主主義も捨てるべきだろう。

Dan the Taxpayer