コメント欄で複数指摘のあった谷甲州の新作をAmazonで探しているときに、「俺を買え」オーラを強く感じたので買ってみたところ大当たり!
David Brinの「知性化モノ」なんか目じゃないゾ。
と、切り出したように、本作品も「宇宙文明による別宇宙文明の育成」というのが主題ではあるのだけど、Brinのノーテンキな「人類トクベツ」「人類マンセー」と比べてると、本シリーズの方がずっと説得力がある。それでいてきちんとハッピーエンドになっているのもすごい。
長さが適切なのもうれしい。全四巻、1000ページを超える大作ではあるのだけど、最近のいわゆる「ラノベ」の多くがジャンプの連載じゃあるまいしだらだらと続ければいいってもんじゃないでしょ、ARIELって何巻あるの?20巻ですかそうですか、というキレのワルさがないのがいい。この点は、確実に「師匠」笹本 祐一を超えている。
本作には、いい作品に必須な「ベタ、オタ、ネタ、メタ」が全て揃っている。だいたい第一巻から四巻までの配分もこの順番になっているのも適切な順番だと思う。第一巻のはじめがベタな「宇宙文明育てゲースラップスティック」になっているかと思いきや、それがきちんと最後の第四巻のメタな伏線になっていて、その間にオタとネタが惜しげもなく投じられているというも、上質の交響曲のようでいい。ちなみに本書のあとがきによると、
P.S. NHKがなんと言おうと、導きの星のBGMはアディエマス「世紀を超えて」、です。
とのこと。うん、ぴったし。
とりあえず手元には他に「第六惑星」と「老ヴォールの惑星」があるのだけど、これらは後日また書評するとして、小川一水が現代日本SFにおける導きの星だというのは確かなのではないか。なんといっても1975年生まれ。今Webを引っ張っていっている世代と同世代というのもなんだか暗示的だ。なにより自分より若い人がちゃんと頑張っているというのが素晴らしい。とはいえ、17歳でデビューとのことなので、もう15年も「現役」なのだけど。
そしてつい数日前までそのことを知らなかったことにちょっと愕然とする。確かに20世紀の終わりから21世紀の初めというのは、私自身多忙で、最もフィクションを読んでいなかった時期だけど、それにしてもこんな大器を全く知らなかったとは。
それだけに、一つ心配ごとがある。
今のペースで彼、に限らず作家たちに執筆させるのが本当にいいのか、ということ。
小川遊水池@blog: そういうわけで星雲賞こんにちは、小川一水です。本日は欠席してすみません。締め切りまであと一週間なので、ちょっと顔を出せません。
星雲賞の授賞式に多忙で欠席しなければならないほど書かないと、食べていけないのだろうか?
これはSFに限ったことではなく、どう見ても欧米の作家より日本の作家は執筆点数が多い。英語と日本語の読者人口の差と言ってしまえばそれまでだけど、もう少し何とかならないものだろうか?
それにしても、「導きの星」は日本語でしか読めないのが惜しい作品だ、誰か英語に訳してBrinの鼻をあかそうという人はいないだろうか。
Dan the Newbie Fan Thereof
このエントリーを読んで、ブリンの知性化モノを最近読んで好きになった者としては、悔しかったり、激しく興味を持ったりで、なんとも言えない精神状態になりました。
このままでは落ち着かないので、明日にでも本屋に行って探してみます。