こちらを復活して欲しかったなあ、私は。

たけくまメモ : 【ネタバレ】日本沈没【ネタバレ】
『日本沈没』に人間ドラマは不要! むしろアリの巣を破壊して右往左往するアリの姿を冷酷に見るガキの視線がこの場合は必要!

もう映画の方のDVDとかは手に入らないみたいだけど、ぽすれんとかではまだレンタルできるみたいなので紹介しておく。

小松ファンの私も、実は「日本沈没」は相対的にはそれほど傑作だと思っていなくて、小は東京から大は地球まで(いや、宇宙だって何度も滅ぼしてるんだけど、長編レヴェルでは)揃っている小松の滅亡モノの中では、郡を抜いて「復活の日」が最高傑作だと思う。

まず、話のリアリティ。

実のところ、日本列島を沈めるより、人類を滅ぼす方がよっぽど楽で、たかが半径10kmの天体でも人類どころか恐竜を一掃できるのに、このレヴェルの天変地異でも日本列島は沈まない。日本列島を「人類時間」で沈めるには、小さく見積もっても最大の小惑星セレスクラス、下手すると月クラスの衝突が必要だと思われ、そうなれば日本どころか全海洋蒸発クラスの大イヴェントになってしまう。他の国を沈めず日本だけ沈めるのは科学的難易度がずっと高く、それだけにリアリティが薄くなる。

次に、「死神の鎌」。「日本沈没」ではどうしても沈没させる以上天災に頼らざるを得ないのに対し、「復活の日」では「イタリア風邪」。しかもこれ、由来が生物兵器なので人災なのだ。こちらの方が敷居が低いだけにリアリティはずっと高くて、それだけに怖い。

次に時代背景。書かれた当時、遺伝子工学はすでに見えていたのだけど冷戦の終わりは全く見えてなかった。「人類滅亡」は実はフィクション抜きでリアルだった時代なのだ。本書において人類は南極に越冬していた一万人を残して滅びたところからはじまる。この風邪に滅ぼされるまでが前半なら、後半は南極にわずかに残った人類をさらに核ミサイルが襲う危機を描いている。そうそう。この時に地震実はとても重要な役割を果たすのだ。地震の使い方一つとっても「復活の日」の方がずっと上手なのだ。

もちろん、人間ドラマも愛も両方ともあるのは言うまでもない。

そして最後に、小松左京とスケール感のマッチング。率直にいって、「たかが」日本を滅ぼすのは小松左京には小さすぎるのだ。だからこそ筒井康隆は「沈没成金」と彼をからかったのだ。♪小さな宇宙(そら)から大きな宇宙(そら)まで滅ぼす作家だ小松左京〜、てなぐらいなもので、SF的にはむしろ小作品が興行的に大作品になってしまったことを揶揄したくなるのは筒井康隆だけではないだろう。

うれしいことに映画もかなりの傑作で、角川春樹がほんとに南極で遭難しかけたそうだ。怖さも原作の世界観を壊さず、それでいて原作より強化されている。原作ではそれでも1万人生き残っていたのに、映画ではわずか893人。そして「第二の滅亡」の危機も....

草刈正雄が演ずる吉住の"Life is Wonderful"という台詞は今も耳から離れない。

これをエアチェックしたのを合州国で見せたら、かなり評価が高かった。ちなみに見せたのはベルリンの壁崩壊寸前だった思う。

というわけで、「日本沈没」で沈み足りない人は、こちらがお薦め。冷戦は去っても、感染症の恐怖はむしろ増しているのだから。

Dan the Fatally Addicted Fan Thereof