今回の旅行では、ずいぶんと本を買わなかった。

その数少ない本の一冊がこちら。

本書は、ロウ人形による解体新書だ。ペーパーバック版が出版されたのは今年だが、ロウ人形は18世紀のもの。

分量的には今時の基準では"Encyclopaedia"はちょっと誇大広告じみているが、それでもMed Schoolで使うのならとにかく、Premed(合州国では医学部は大学院扱いで、その前に学部で履修するのがPremed)では充分教科書として使えるのではないか。

「"Encyclopaedia"は誇大」とはいっても、全ページカラー印刷で574ページある。それゆえ一ページの厚さが厚いので、通常の1000ページ本ぐらいの厚さがある。これが確か$14.95だった。

ちょっと頭にくることに、これがamazon.co.jpで1,443円で買えるのだ。なんと日本で買った方が安いのだ。これではCody's Booksもつぶれるよなあ。せっかく久しぶりにBerkeleyに行ったのに。類書でここまで安いものはないだろう。これだけでも買いである。

ロウ人形を使っているというのもいい。プラスティネーションほどの生々しさはなく、それでいてCGの無機質さもない。ふつうの部屋においておくのにちょうどいい質感、とでもいうのか。妻は「うぇっ」と言ったけれども、本物の生々しさはこんなものではありませぬぞ。

遠藤先生は人体を行き当たりばったりの産物と表したけれども、即興も40億年も続ければなかなか見所のある造形が盛りだくさんになるではないか。個人的に気に入ったのは、臭神経。脳から逆さにしたイソギンチャクのように垂れているのだ。図鑑ではこのイソギンチャクが省略されていて、脳は異様にツルンとすましているのだけど、本書にはそれもはっきりと、しかもその部分を拡大したところまで出てくる。

本書は英語、ドイツ語、フランス語の三か国後で書かれていて、各ページの見出しはラテン語になっている。しかし本書の主役はなんといっても写真。言葉はそれほど気にする必要はないし、名詞だけ追えばいいので、辞書を片手に読むのにもちょうどいい分量だ。本書は1999年に出版されたハードカヴァーのペーパーバック化なのだが、この値段で出しているということは結構売れているということでもあるので、いずれは日本語版も出るかもしれないが、折角1500円を切る値段で手に入るのだから、それを待つ必要はあまりないだろう。あなたも是非一冊。

Dan the Anatomical Man

P.S. しかしこれを見ると、Wikipedia Anatomicaが欲しくなるなあ。