今回Berkeleyに行って少なからずショックだったのは、街で一番立派な本屋だったCody'sがつぶれていたこと。

CNET Japan Blog - 中島聡・ネット時代のデジタルライフスタイル:AmazonとWalmartの狭間に消えたTower Record
言い換えれば、Tower Recordは、ベストセラーをディスカウント・ストアに、ロングテールをAmazonに、若年層を違法ダウンロードに、アーリー・アダプターをiTune Music Storeに奪われるという、いつ倒産してもしかたがない状態にあったのである。

実は私がまだ貧乏学生だった頃には、Tower RecordもTelegraph & Durantという、街の一等地にあったのだ。現在そこは貸店舗になっていたようだ。Rasputinはまだ健在だったが、どれくらい持つだろうか。

Tower Recordsは全国チェーンのCD屋なので、正直倒産にはそれほど同情していない。「Walmartに負けただけ」といってしまえばそれまでだからだ。Barnes & Noblesがつぶれても多分それほど同情しないだろう(前はBart Stationの近くにあったのだが、同じShattuck Ave.の南側に引っ越していたい)。しかしCody'sがなくなったのはショックだ。

実際、Berkeleyに限らず、コーヒー屋といえばスタバだらけだし、メガチェーンによる小売りの寡占化はかなり進んでいる。Berkeleyのような学生街も、あまり面白からぬ意味でファーストフード屋とサラ金とパチンコ屋に占拠されつつある日本のどこにでもある街角に近くなっていたように思う。

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なぜか知らないが企業倒産が悪いことのように扱われる日本と異なり、将来性がない企業には誰も救いの手を差し伸べたりしない米国においては、この手の新陳代謝がどんどん進む点がある意味でとても健全だ。

問題は、その健全な商店ばかりを我々が本当に望んでいるのか?という点だ。

合州国国内の人々は、口を揃えて「好景気が続いて、この国の食べ物もずいぶんと美味くなった」というのであるが、はっきり言って他の国に追いついていない。中国がへっちゃらだった妻が、今回食い物ではずいぶんと根を上げていた。値段は確かに上がった。今や昼飯でも10ドル以上平気でかかる。しかし味はというと、確かにコーヒーはスタバのおかげで底上げが果たされたように思うが、それ以外は相変わらず。「アルデンテ」って多分米語にはないんだろうなあ....

で、結局うまいものはというと、ホテルのてっぺんとかでホテルのてっぺん価格を払って食べるか、後は零細エスニックかのいづれか、ということになる。今もって合州国は食い物に厳しい国であった。

確かに、本はAmazonで買おうがCody'sで買おうが変わらない。こういった商品は「もっとも健全に売るものが勝ち」でいい、というより仕方がない面もあると思う。私自身、今や本の八割以上はAmazonで買っているかも知れない。

しかし、食い物のようなものまで「健全」を推し進められると、むしろ健康にはよろしくない。今回私は5kg近く太った。帰国後一週間で、特に何も努力しないで4kg減ったことを考えれば、フツーに健全な店で飲み食いすることが意外なところに意外な負担をかけることが改めてわかる。Googleが社内食堂を充実させる理由もむべなるかな。

結局かの国では、自律心を強く発揮しなければ過剰に食い、そしておそらくそれにより過剰に医療費を費やす羽目になる。これらのことは私の実感だけではなく、ありとあらゆる統計が証明している。

社内食堂から「要塞団地」まで、かの国で「まっとう」な生活を送るには、「まっとう」なcommunityに所属した上で、まっとうならぬ努力をしてそのcommunityを「下界」から隔離しなければやってられないという印象がどうも拭えない。10代終わりから20代はじめの私には、この「美国的健全」がずいぶんと心地よかったのだが、それをいまわのきわまで続けるのはちょっと勘弁して欲しい思った今回の訪問であった。

Dan the Man too Lazy for the U.S.

追記:

On Off and Beyond: インターネット時代に本屋はどうやって生き残るのか
スタンフォード大学から車で5分ほどのところに、Kepler'sという本屋がある。このKepler'sが経営難を理由に突然閉店したのが去年。その後資金を集め再スタート、「レギュラーのお客さんからの会費制度」を導入して、なんとか1年乗り切りました、、、という記事がフリーペーパーPalo Alto Dailyに載っていた。

Stanfordもそうだったのか。Stanfordも今回立ち寄ったのだけど、本屋事情がわかるほど詳しくはなかったので。