問題は、それがなぜなのか、という点につきると思う。

ユメのチカラ: オープンソースの生産性
まとめるとOSSは、通常のソフトウェアよりも欠陥が少なく、世界最大のソフトウェア会社よりも開発力があり、技術革新を促進している。

そのうち、品質向上に関しては、実に明解な答えがある。

オープンソースは、ロングテールなのである。

オープンソースがまだオープンソースと呼ばれる以前から、Usenet Newsや開発者Mailing Listでは、以下の表現がよく見られた。

My two cents.

これは、メール一通分の手間ひま、ということである。

このメール一通分のContributionを丹念に拾うことができたことこそが、オープンソースの品質向上につながったのだ。

プロプライエタリな世界ではどうだったか?早い話、ゴミ箱行きだったのである。

ちょっとしたバグがある。これを開発者に報告する。その後何が起きるか?

プロプライエタリな世界では、有料のエンジニアが、有料でそれを検証し、有料でバグフィックスをリリースする。当然のことながら、それでペイしなさそうなものは後回しにされるか、放置される。

ところがオープンソースの世界では、それはそのまま世界に向けて公開される。同様のバグに悩んでいたユーザーは、その場で「2セント払って」、「うちにもある」と報告することができる。そしてソースが公開されているので、そのバグは誰が直してもいいことになる。もちろんバグフィックスはその場で公開される。

オープンソースというのは、実はこの2 centsの積み重ねなのだ。

裏を返すと、オープンソースにおいては、2 cents以上の貢献を必要とする作業では、実はそれほど優位性を発揮できない。それがなにかというと、Invention(発明)だ。オープンソースでは一旦InventされたものをInnovate(革新)していくことは得意でも、「今までどこにもなかったもの」をゼロベースで開発するのは不得手なのである。すでにSQLが確立されてからPostgreSQLやMySQLを出すことは出来ても、SQLそのものを発明するには至らないわけだ。

私が失礼を承知で「サルマネ」と言ったのは、そういうことなのである。

ここまで言えば、懸命な読者であれば

404 Blog Not Found:サルが「オリジナル」を超えるとき
Open Sourceは、今一つの転機、いやもっと率直に言うと、危機、に直面しているように感じる。

の危機の正体がおわかりいただけると思う。

現在のオープンソースにおいて、「タネ」となるべきInventionが減っているのである。さもありなん。ほとんどのInventionに対して、それに呼応するOpen Source Projectがすでに存在するのだから。

オープンソースというのは、ある意味ウナギの養殖やマグロの畜養に似ている。稚魚を生み出すところまではまだ至っていないのである。

この「タネ」までオープンソース的なやり方で進める動きは確かにある。これらは今生みの苦しみの中にいる。次回はこれをとりあげようと思う。

Dan the Open Source Programmer