書評する機会を逃していたので、さなえさんのところからアクセスが来たついでに。

あんなこと、こんなこと。どんなこと?:カラス、この滑稽な生き物
いきなり、後方から激しい羽音が私の頭を掠めたかと思うと、次の瞬間、そのカラスがごろりと横向きに一回転した。横から別のカラスが急降下し両足で蹴ったのだ!蹴られたカラスはそそくさと起きあがり、なんでもありませんよと、地面をつついてみせたのだが、明らかに、蹴られた痛みより、転がされた恥ずかしさの方が勝っていたようだ。私の視線を意識したのかもしれない。

本書「カラス なぜ遊ぶ」は、そんなカラスの生態を、文字通り解剖学的に探求した本である。それもそのはず。著者の杉田氏は神経解剖学者で、その著者が実際にカラスを飼育し、そして解剖して書いた本だから面白くないはずがない。その杉田氏も、カラスを研究対象にしたのは後の方で、研究開始直後は我々と変わらぬ「素人」だった。

そんな杉田氏がなぜカラスに魅せられたのか。それは本書を読んで是非確認していただきたいが、その主な理由はやはりその賢さ。イヌやネコどころかサルにも見劣りしないその知的な行動を可能としているのが、その脳。カラスの脳化指数は0.16。これはイヌやネコを上回る。

しかし、ほ乳類の分類に使われていた脳化指数をそのまま鳥類にあてはめるのにも問題がある。彼らは脳の作りも哺乳類とは結構異なる。それで著者はカラスをはじめとするさまざまなトリの脳を解剖するのだが、その結果哺乳類の脳化指数に対して、哺乳類の大脳にあたる終脳の重量を脳幹の重量で割った「脳内比」という分類法にたどりつく。その結果を見る限り、鳥類の中ではカラスは圧倒的に脳が発達していると言えるようだ。脳内比で比べると、ハトやニワトリの1.6に対して、ハシボソガラスは5.7、ハシブトガラスは6.1もあるのだ。

そして、その脳内比の低いはずのハトでさえ絵を見分けるなど結構な知能があることが最近の研究でわかってきている。これがカラスならどうなるだろうか。研究はまだはじまったばかりである。

しかし、そのカラス、日本だけでも毎年30万羽が「駆除」される嫌われ者である。実際著者がカラス研究にはまった理由も、著者が実験用に買っていたニワトリのヒナがカラスに「ガラ」にされたことがきっかけで、カラスの知能は人間にとってうれしくない方向に発揮されているようだ。

しかし、知能からだけ見れば、とても「駆除」すべき動物とは言えないだろう。イルカやクジラを保護せよという人がなぜカラスを保護せよと言わないのか私には少し不思議である。少なくとも「単なる害鳥」と「白黒」つけるには、あまりに「色鮮やかな」動物であることを本書は明かしてくれる。

カラスが嫌いな人も好きな人も、是非。

Dan the Ravenphilia

See Also: