こんな重要判決を見落とすところだった。
Yahoo!ニュース - 読売新聞 - 自社株購入権、最高裁が加算税課税認めず…国税が敗訴ストックオプション(自社株購入権)で得た利益を巡り、米国企業の日本法人の元役員らが国税当局による過少申告加算税の課税取り消しを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷は24日、同加算税の課税を取り消す判決を言い渡した。判決は「過少申告加算税を課すのは不当」と述べ、国税側の一部敗訴が確定した。
現在では、ストックオプションで得た利益はキャピタルゲイン課税でOKということになっている。その税率は基本的に20%だが、現在は減免措置があるので10%である。
キャピタルゲイン課税?-?[マネー用語集]All?Aboutキャピタルゲイン課税の税率は2007年3月までは10%、2007年4月以降は20%になる予定となっている。キャピタルゲイン課税については、原則とて、毎年確定申告をして税金を納めることになっている。
ただし、無条件にキャピタルゲイン扱いということではない点に注意が必要だ。
あずさ監査法人 | 新ストックオプション税制とインセンティブプラン2.税制適格ストックオプション
上記の原則的課税に対し、税務上の適格要件を満たしているストックオプションの場合には特例措置が適用され、権利行使時の課税は繰延べられ、株式売却時に売却価額と権利行使価額との差額に対して譲渡所得として課税されることとなります。
そう。鍵はこの「税制適格」という奴で、上のニュースの見出しだけ見たあとで、
ストックオプション利益 加算税取り消し : 金融ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)ストックオプションを巡っては100件以上の課税取り消し訴訟が起こされたが、最高裁は昨年1月、利益は給与所得だとする判断を示している。今回の訴訟では、国税当局の見解が定まらない時期に誤った申告をした納税者にペナルティーまで科すことが適当かどうかが争点となった。
をみて「ハァ?」となってしまう理由がここにある。
分かりやすくまとめると、こうなる。
- ストックオプションは、1998年以前は一時所得だったが、それ移行給与所得になってしまった
- ただし、「税制適格」があると、権利行使時は非課税、株式売却時に譲渡所得として扱える
1.だけでは「これはひどい」タグをつけたくなるけど、今は2.があって、ベンチャーは皆堂々と活用しているので今ストックオプションを授与される立場にいる人たちはそれほど心配する必要はないだろう。しかし、今の人たちが心配しなくてもよくなったのは、この1.と2.の端境期に追徴された人々がきちんと戦ってくれたということを無視できない。改めて感謝の意を示しておきたい。
それにしても、税制というのは日本に限らず「特例」だらけなのはなぜだろう。おかげで自分の責任なのに、プロに手伝ってもらわないと自分がいくら払う必要があるのかわからない。仮に自分で懸命に勉強して、税理士が作ったのと変わらない確定申告書を作っても、それを税務署が認めてくれるのかがとても不安で、結局プロに提出してもらう羽目になる。おそらく今回の裁判のみなさんは、自分だけで申告したのではなく税理士に手伝ってもらって、というより税理士が示してくれた指針に従って申告していたはずだ。それなのに追徴されたから戦ったのだろう。税理士なしで「オレ申告」して物言いがついたとしたら、こうは行かなかったはずだ。
美しい日本は美しい税制から始まると思うのだけど、こちらはノータッチかな。
Dan the Taxpayer
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