この一節から判断するに、いなばさんはまだ「ディアスポラ」はお読みでないようだ。
404 Blog Not Found:「資本」論-いなばさんのコメントぼく自身は、イーガン『ディアスポラ』の世界にも基本的な経済原則は貫徹していると考えます。計算資源は有限ですから。
ディアスポラの世界は、Economy of Abundance が具現化された世界でもある。ポリスの住民達には、我々「肉体人」の世界の規範のかなりの部分が「継承」されているが、なぜか貨幣経済はそっくりどこかに消えている。知識鉱山に入山料はないし、太陽系を一周する粒子加速器「長炉」(the Forge)の建設も、建設費は議題にさえなっていない。
とりあえず、ここではあえて私自身はなるべく論考をはさまず、Sci-Fiが Economy of Abundance をどう扱ってきたのかをいくつかの作品から取り上げることにする。
404 Blog Not Found:断絶への航海もし、世界中の誰もが億万長者だとしたら、その時お金というものは意味を為すのだろうか?そしてもし為すのだとしたらそれに代わる「信用」とは何なのだろうか?
やはり Economy of Abundance を語る上で真っ先に取り上げるべき作品はこれだろう。何しろ本書のメインテーマが、 Economy of Abundance vs. Economy of Scarcity なのだ。
地域間戦争で荒廃した地球から、それ以前にロボット宇宙船によって植民された惑星系に移民線が向かう。しかしロボット宇宙船によって植民された人々は、貨幣の価値が全くわからない人々だった....
というのがその出だしで、惑星ケイロンの「原住民」たちと地球からの「難民」たちの軋轢がエスカレートしていき、ついには....というのが本書の主なあらすじ。
HoganらしいOptimismにあふれた作品なのだが、実際にこういくのだろうかというのもまたHoganの作品に共通する読後感である。
404 Blog Not Found:God according to an opensource programmer
Clarkeの作品の中で、私が一番好きな作品だ。
本作品において、 Economy of Abundance は、地球人口の減少という形で具現化する。手元に原著しかないのでそこから引用する。
Because there was no longer any reason to take heed for the future on this planet, Earth's resorces and the accumulated wealth of all the ages could be squandered with a clear conscience. In terms of material goods, all men were millionaires, rich beyond the wildest dreams of their ancestors, the frits of whose toil they had inherited. They called themselves wryly,. yet not without a certain pride, the Lords of the Last Days.
If a physicist needed a hundred tons of gold for an experiment, that was merely a minor problem in logistics, not budgeting.
本作品に限らず、Clarkeにおける Economy of Abundance の出現は、パイがばかでかくなることではなく、スライスが大きくなる形を取るものが多いように思える。
あと、Clarkeといえば、Economy of Scarity をきちんと扱った作品もある。"The Fountains of Paradise", 「楽園の泉」がそれだ。起動エレベーターの建設にはきちんとbudgetingもあります。今手元にないのだけど。確か建設費はGGP (Gloss Global Product)2年分だったような記憶が。
404 Blog Not Found:Alone, together. The way it always used to be.
そしてもしかすると、Value 2.0の起点にして帰点かも知れない。
今のところ、 Econmy of Abundance の起こりについても、それが巻き起こす既存の世界との軋轢についても、私が一番リアリティを感じたのがこの作品。
404 Blog Not Found:Alone, together. The way it always used to be.この世界においては、「先進国」はすでにnanoforge(ナノ鍛造機)と呼ばれるナノテクノロジーによる万能工作機械と、それを駆動するための核融合炉を持っており、欲しいものは何でも手に入る世界となっていて、今日における経済はある意味消滅している。にも関わらず彼らはNgumi(ングミ)と呼ばれる「途上国連合」と、現在合衆国とイラクの間で繰り広げられているのにも似た不正規戦争状態にある。なぜか先進国はnanoforgeを独占し、その利用を全世界に開放しようとはしない。それは何故なのだろうか....
この世界にはすでに Economy of Abundance は訪れているにも関わらず、世界は相変わらずの紛争状態にある。前に取り上げた二作品とはこの点で一番異なり、それゆえ一番説得力がある。
それでも、落ち着く所に落ち着かせるところが、Haldemanの凄さ。
Alone, together. The way it always used to be.
というのは、経済どころか人「間」の根本でもある。この最後の一行を噛み締めるためだけでも本書を手元においておく価値がある。
翻訳が出ていないのでちょっと敷居が高いのだけど、ぜひとも挑戦してもらいたいのが本書。
404 Blog Not Found:Cyberpunk 2.0めつけは、Economy 2.0。この言葉がどこで飛び出すかは読んでからのお楽しみですが、本書はTim O'reilleyの"What Is Web 2.0"よりも本書の(ハードカヴァー版の)上梓の方が先なのです。
そう。実は Economy 2.0 という言葉は、私より本書の方が先。著者のStrossはCPAN Authorでもあり、Open Source を「体験」としても知っている。実名で登場する "Economy 1.0" 時代の産物の多さも本書は随一で、第一章は Sci-Fi というより近未来ミステリーの感じが強い。一刻も早い翻訳が待ち望まれる。
そしてこれらの作品に共通しているのが、通貨の地位。はっきり言ってがたがたなのだ。少なくともSci-Fiの世界においては、Economy of Abundanceと通貨の相性はよろしくない。だから私としては通貨もアリの Economy of Abundance が支配する世界を描写した作品を是非読んでみたいのだ。稲葉先生いかがでしょう?
Dan the SciFilia
追記:
ダン絶へのコーガイ - 過ぎ去ろうとしない過去この本はマッチョ教*1信者たちにとっての黙示録なので、是非ダン君先生は読むべきです。
読んでますが何か。しかも原著と訳本の両方。問題は今の地球はまだケイロンではないこと。少なくともエネルギーが有料なうちは無理だろうね。
(http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/7a1ad2dce1f78f21fac28d0dbc33075b)
ということですかね。
ちなみにリンク先の「404 Blog Not Found:Alone, together. The way it always used to be.」では珍しく「合衆国」と通常の表記を用いられていますね(逆typo?)。