これはいくら何でも結論を急ぎ過ぎではないのでしょうか。

山形浩生 の「経済のトリセツ」  Supported by WindowsLiveJournal - アフリカのエイズの新しい分析……それと経済学の何たるか。
だが、彼女の研究結果でいちばんとんでもないのが、最後の部分だった。実はアフリカ人でも、所得が多くて余命が長い人々はちゃんとエイズの予防措置も積極的にやっている。余命が短いところは、そういうことに関心がない。ここから導かれる結論。アフリカの人たちは、エイズだから寿命が短いのではない。寿命が短いからエイズにかかることを気にしないのである!
エイズが発症して死ぬのは 10 年以上先だ。その頃に自分が確実に生きていると思えば、エイズ予防のために余計な手間もかけよう。でも、どうせその頃は死んでるだろうと思えば……リスクは知っていても手はうたない! バカだからエイズ予防をしないんじゃない。ちゃんと賢く合理的な計算に基づいて、そんなことをするだけ無駄だという陰惨な結論を、意識的か無意識のうちにか出してしまうだけの知恵があるからこそ予防しないわけだ。

もしこれが事実だとすれば、彼らはなぜわざわざ10年後に苦しむ代わりに、今自殺しないのでしょうか?自殺率の統計はどうやらないようなので安易に結論は出来ませんが、「勝ち逃げ」ならぬ「やり逃げ」をするのであれば、なぜ確実におとずれる苦痛を待っているのでしょうか?

もし確実に腹上死できる薬があってそれに安価にアクセスできるのであれば、かれらはそれをこぞって飲むのでしょうか?

それでももしサハラ以南のアフリカ人の寿命が、エイズの蔓延に関係なく短いのであれば、確かに「どうせ気をつけても気をつけなくても死ぬ」から「気をつけない」と結論することに合理性があることは理解できるのですが、これらの地域では、平均寿命は単に短いのではなく、より短くなっています。

Life expectancy - Wikipedia, the free encyclopedia
The major exception to this general pattern of improvement has been in those countries worst hit by AIDS, principally in Sub-Saharan Africa, which have seen significant falls in life expectancy due to the disease in recent years. Another exception is Russia and some other former USSR republics after the collapse of the Soviet Union. Life expectancy of men dropped to 59.9 years (below the official retirement age), of women to 72.43 years (1999).

彼らは、本当に自分たちに未来がないと信じているのでしょうか?意識的であれ無意識的であれ。

とはいえ、より一般的に、「未来がないことが保証されている場合は現時点で最も利得が大きな行動を取るのが」「人生を通じた利得を最大化する手法」であることは、経済学を知らない人も無意識的に知っていますし、経済学の方でも同様の知見が散見できます。面白いところでは「パラサイト・イブ」の伏線につかわれてもいます。

ですから、アフリカの「人生やり捨て」問題と、日本の年金問題が根底のところでつながっているかも知れないという可能性は0ではないと思います。

しかしそれを「合理的」と呼ぶのは、社会の安定性確保というのが、個々人にとっては「非合理的」という結論をも導くように思えます。彼らは本当に無意識的合理的に「予防は無駄」だという結論に達しているのでしょうか?彼らはそこまで徹底的に Selfish に徹することが出来る人々なのでしょうか。少なくとも、彼らは苦しむのは自分だけではないことを知っているはずなのですから。

とはいえ、「個人の努力が反映されない社会に対し、社会の安定性確保を放棄するのは個人としては合理的」だというのは私も納得できます。サハラ以南で起こっていることはこれなのでしょう。エイズはコンドームだけで止められるかも知れませんが、戦乱はそうは行きませんから。

Dan the Economic(al)? Animal