palさんの解答待ちだったのですが、みなさん早くもしびれを切らしていらっしゃるようなので。

404 Blog Not Found:直感的な定理の反直感的な帰結
最後に問題。妻と私は誕生日が同じなのだが、カップルどおしの集まりにおいて、何組以上のカップルがいれば我々のようなカップルが一組以上含まれるでしょう?

まずはRETさんの解答。

1-(364/365)^N > P
ってことでいいんですかね.

一見正解に見えますが、違います。もし問題が「N人の中に、誕生日が同じ人がいる確率」であればこれでOKなのですが、この場合、「誕生日が同じ夫婦」ですので当てはまりません。

この点ガスコンさんはさすが。上の問題を考察した後で、ちゃんとそのことを見抜いています。

ガスコン研究所: ■コマネチ大学数学研究会「誕生日」
そこで、冒頭の弾さんの問題に戻る。これを確率の問題としてとらえると、カップルのふたりの誕生日が一致する確率は「1/365」であることは明白(うるう年は考慮外)。同じ結果を導くのに、わざわざ式を「=1-(364/365)」などと複雑にする必要はない。つまり、どのカップルも誕生日が一致する確率は、1/365なので、365組のカップルを集めたら、そのうちの1組くらいは、同じ誕生日のカップルがいると考えてもいいんじゃないの。弾さん夫妻と同じ誕生日のカップルとは、一言も言っていないので、どんな誕生日だろうが、とにかく誕生日が同じカップルがいればいいのだから。

なのですが、これも実は正解ではないのです。

それはなぜかというと、「誕生日が同じ夫婦が全くいない」場合というのがありえるから。

そのような状況は、簡単に作れます。例えば「誕生日が同じものどおしは結婚してはならない」というルールを作ってしまうだけでいい。その場合でも、仮に花婿候補と花嫁候補の数が常に等しく、かつ一日に生まれる人の数が常に同じなら、「夫は自分より一日早く生まれた人と結婚する」というアルゴリズムで確実に配偶者を得ることができます。この場合、2月29日問題すら発生しません。

誕生日の場合、「そんなバカな」ですが、例えばお隣の国のように、「同郷かつ同姓どおしは結婚してはならない」というように似たようなルールがありますし、それを言えばそもそも結婚は男女に限るというのもあくまでルールです。

このように、ルール設定によって確率というのは簡単に変わってしまうというのが解答その1。

解答その2は、さらに人を食ったものです。

正解は、一組以上。我々夫婦を招待すれば、確実にそうなります。

人を食った解答ですが、これにも往々があります。ドレイクの方程式という有名な問題があります。これは、「地球外文明は存在するか、存在するとしたらどれくらい存在するか」というのを確率論的に導こうという方程式です。

ドレイクの方程式 - Wikipedia
N = R* × fp × ne × fl × fi × fc × L

この各要素の確率がどれくらいかといのがSETIの主要命題ですが、しかしこの問題から「地球外」を取るだけで、答えは「少なくとも1つ以上」と明らかになります。

実はこの問題は、そもそも確率論で処理しようとした時点で正解ではなくなってしまうのに、あたかも確率論の問題に見えるところがミソなのです。確率を扱う場合には、さまざまな条件を仮定しますが、確率論に慣れていると、仮定にすぎなかったはずの条件を、あたかも事実であるかのごとく思い込みがちです。本当は、まず実測してみてから理論値と比較して、「サイコロに細工はしてなかったか」を結論するべきなのに、先に理論値を出して、現実もその通り進むだろうというのは専門家ほどハマる間違いのようです。

有名どころでは、ブラック-ショールズ方程式にまつわる逸話があります。ブラックとショールズはこの方程式を元に割安なオプションを探して購入してみたものの、実は割安に見えたのは購入したオプションの原資産の株を発行している会社が配当性向を変えたためで、彼らはそれを見落としたというオチです。

金融工学、こんなに面白い」にのっていたエピソードです。ちなみに同書には、ブラック-ショールズ方程式なしに、ずっと簡単な方法でオプション価格を求める方法ものっています。

ノーベル賞を取る人たちですらそうですから、我々が確率の落とし穴にはまるのは決して恥ずかしいことではないのでしょうというオチで本問題をしめくくることといたします。

で、実際のところどれくらいいるのでしょうか、誕生日が同じ夫婦。実は私も自分以外の実例を知らないのです....

Dan the Unpredictable Man