まあ何とハシタナイタイトルであることか。
初出2006.12.02; 2007.06.30増補
このタイトルに耐えられるだけの書き手はそうはいない。
そう、日垣隆ぐらいでないと。
本書「すぐに稼げる文章術」は、タイトルどおり、文章を糧に変えるにはどうすればいいかということを一冊にまとめたものである。すでに同様の本としては「404 Blog Not Found:貧すれば鈍、鈍すれば廃刊」で紹介した「売文生活」があるが、本書の応用範囲は、売文生活よりも一回り広いものとなっている。なぜならば、もはや文章を糧に変えるというのは、作家だけの特権でも義務でもないからだ。
裏表紙よりあらゆる場面でかつてないほど文章力が求められる現代は、プロとアマの壁を越え、誰でも文章で稼げる時代。文章力を磨くことは、最もローリスクでハイリターンな自己投資だ。本書では毎月の締切50本のほか、有料メルマガ、ネット通販と、「書いて稼ぐ」を極めた著者が、そのノウハウを全公開。トラブルを招かないメール文、上司を説得する企画書、インパクトのあるエッセイ、読者を中毒にするブログetc.努力不要の文章講座。
今や文章を書くという行為は、ありとあらゆる職業に求められる、今、そこにある課題なのである。そして日垣隆ほどこの分野にまじめに取り組んでいる人が、日本語でもモノを書く人の中にいるだろうか。本書にも「自分の市場を持て」という言葉が出てくるが、この「文章を売るノウハウ」にかけては、日垣隆の独擅場の感すらある。
日垣隆は、野球で言えばイチローに似ている。「そして殺人者は野に放たれる」ようなホームランもたまにあるが、彼が心がけているのは「確実に出塁」、すなわちクリーンヒットを出すことだ。平凡も積み重ねれば非凡であるように、日垣隆の徹底的とも言える平凡の自覚もまた非凡である。
あとがきよく考えてみれば、実際のところ私にとっての文章は、お金を払って読んでもらうという以外の意味を持っていません。そういう職業的な体質を骨の髄までもった俗人です。
プロとは「すごい人」ではない。自分がすごくないことを知り抜いている人のことである。
こういう人から何かを買うというというのは安心感がある。得をさせるというよりまずは損をさせないということを必ず押さえているからだ。本書も例外に漏れず、読んだ人は絶対に損をしないようになっている。しかしそれ以上に大事なのは、それを著者が無理をせずやっていること。手を抜くべき所はきちんと抜いている。
しかし、この「肩の力の抜き方」ばかりは、さすがの日垣さんも開示していない、というより体得物であるがゆえに書きようがないのだろう。こればかりは自分で会得するしかないようだ。実のところ私が一番学びたいのはそこなのだが。
文章を書くことから何らかの見返りを得たい全ての人に。
Dan the Fan Thereof
追記: 別entryで使いたいので、本書の第七章で紹介されている33冊をここで紹介させていただく。これらの本をなぜ日垣隆が選んだかは、是非本書を。この第七章そのものが、ちょっとした書評の書き方入門になっている。
- 読書について 他二篇 - ショーペンハウエル
- 芸術起業論 - 村上隆
- 作曲家の発想術 - 青島広志
- 国家の罠 - 佐藤優
- 早稲田古本屋日録 - 向井透史
- ナンダロウアヤシゲな日々 - 南陀楼綾繁
- 解剖男 - 遠藤秀紀
- 知的な男は、モテる。 - 中谷彰宏
- ラクして成果が上がる理系的仕事術 - 鎌田浩毅
- 執筆論 - 谷沢永一
- 態度が悪くてすみません - 内田樹
- アカデミー賞を穫る脚本術 - リンダ・シーガー
- 大人のための文章法 - 和田秀樹
- 「知」のソフトウェア - 立花隆
- 伝わる・揺さぶる!文章を書く - 山田ズーニー
- ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法 - 福田和也
- ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法 2 - 福田和也
- 考える技術・書く技術 - 板坂元
- フィールドワークの技法 - 佐藤郁哉
- 売文生活 - 日垣隆
- 知的ストレッチ入門 - 日垣隆
- まだ見ぬ書き手へ - 丸山健二
- 聞きとりの作法 - 小池和男
- 見城徹 編集者魂の戦士 - 見城徹
- ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル - 野口悠紀夫
- ウェブ進化論 - 梅田望夫
- 月1千万円稼げるネットショップ「売れる」秘訣は文章力だ! - 勝吉章
- 新聞がなくなる日 - 歌川令三
- コンテンツ消滅 - 小林雅一
- 論文作法 - ウンベルト・エーコ
- 日本語の正しい表記と用語の辞典 - 講談社校閲局編
- 新しい国語表記ハンドブック - 三省堂編修所編
- 校正記号の使い方 - 日本エディタースクール編
目からうろこです。さっそく実践してみようと思います。