どちらも同意なのだが、むしろ問題は法律というより現場の運用にあるということをコンセンサスとして確立した方がいいように思う。
池田信夫 blog 著作権の延長は有害無益だ以前にも紹介したミッキーマウス訴訟の意見書でも明らかなように、経済学では著作権の延長が有害無益であることは100%のコンセンサスである。これは「著作者の権利と消費者の権利にはトレードオフがある」という一般論ではなく、著作者の保護はすでに過剰なので、これ以上強化することは害しかないのである。著作権保護は死後ゼロ年でいい。著作権保護期間延長って意味わかんない。 [絵文録ことのは]2006/12/08
そんなことより、せめて「初版発行部数の10%」の印税が確実に手に入るようにしてください。そこを保護してくださいよ、死後の他人の利益より、今現在の本人の生活費を。
これが何を意味するかというと、「強い」著作権保持者ほど、多くの利権を手にする、ということになる。実は著作物の値段を決めているのは、著作権そのものではなく交渉なのだ。
その結果、作品を成り立たせるのに最も重要であるはずの著作権者の取り分は、今では異様なほど低いものとなってしまっている。印税は10%というのは世間の常識であるが、これは今や最低ではなく最高に近い。技術書ではさらに低いし、これが単著ではなく共著となると当然のことであるがさらに低くなる。自分で本を書くより、人の書いた本を売った方がマシという場合の方が多いのだ。
少し考えてみればわかる。Amazonでは最高6%(といって、そこまで行くアフィリエイトはかなり稀だとも思うが)を還元して、しかもコストが安いとは言えない個別宅配をしても利益を出している。裏を返せば流通マージンがいかに高いかということだろう。技術革新で出版コストも流通コストも下がっているはずのに、著作権者にはその利益がほとんど還元されていないのが現状なのだ。
その結果、日本の作家たち(本に限らない)は、信じられないほど多くの本を上梓する。まあ中谷彰宏だの和田秀樹はさておき、年間二桁という人も珍しくない。印税率10%で計算しても1000円の本が一万部売れてやっと100万円。四半期ごとに一冊出さないととても食えないだろう。
せめてこれを倍にすることは不可能なのだろうか?
著者の手取りを倍にして、残りのステークホルダーの受け取り分を据え置いても、1000円の本は1100円になるだけだ。印税率でいうと200円/1100円=18.18%ということになる。仮に印税率を20%としても、残りのステークホルダーの受け取り分を据え置くには 900円/80% = 1125 円でいいことになる。
ましてや、今や本の単価は新書ブームで下がっている。私にとって新書は「安い」というより「かさばらない」ことが問題なので、むしろ1500円程度だった新刊書がどんどん新書に移行して今の状況は大歓迎だが、印税の安さがやはり気になる。新刊書で1500円のものは、新書ならおよそ750円。しかし印税率が倍になれば、一冊あたりの受取額は新刊書と変わらないことであれば、新書の作りももっと丁寧になるのではないか。その際の価格は上の計算法で843.75円。私としては、850円なら喜んで買うのだが。実際今や1000円を超える新書も少なくないので、抵抗感はほとんどない。
法律をどうにかするのも必要だが、それは現場をもっと改善してからでもよいのではないだろうか。
Dan the Paperback Reader
版元の人が本があふれすぎていて、売れないと申してましたが、システム・業界構造上の問題が深く関わっているんですね。
音楽業界の方、全ての元凶はJASRACにあるように思えますが、どうでしょうか? 彼らが徴収しているお金は本当に演奏家などの手に渡ってるのでしょうか?
みしまさん、これがあまり箔にはならないんですよ。自分の作ったソフトの方がよほど良い仕事してくれます。