結局広告に対する最大の誤解は、「広告の視聴は無料」だということである。

H-Yamaguchi.net: たまには「賢くない消費者」になったほうがいいのではないか
これまたいうまでもないが、面白いテレビ番組を無料で見られるのも、西武が優勝するとバーゲンセールになるのも、すべて、とまではいわないが大半はこの幻想のおかげだ。もし、このビジネスモデルが「完全に」崩壊してしまったらどうなるか。

少し考えれば明らかだが、広告の代金は、結局のところ広告された品に含まれているのだ。別の言い方をすれば、我々は広告を無料で視聴している代わりに、広告業界にあとで「広告税」を払っているようなものだ。

だとしたら、いっそ消費税と同じように「視聴税」を徴収し、それを視聴に応じて再配分するというのはどうだろう?これであればよく視聴されるコンテンツは、よく視聴されることそのものに対して報酬が与えられる。広告主の顔色を伺う必要は、もはやない。

それがよいかどうかはとりあえずおいておいて、もしこれを実行に移すとしたら、問題は税率と再配分の仕組みということになる。

税率の方の算出方法はそれほど難しくない。現在のの広告業界の市場規模で消費税の徴収額を割り、それに5%をかければいい。

人力検索はてな - 日本の広告業界の市場規模を教えて下さい。」によると、日本の広告業界の市場規模は7.8兆円」。それに対し消費税は「一般会計税収(主要税目)の推移」によると10.5兆円。単純計算すると3.7%ということになる。

もちろん、広告の全てが無料コンテンツの政策に使われるわけではない。このあたりの数字はもっときちんとした吟味が必要だが、それでもいいところ3%程度ではないのだろうか。

次に、今度はその税収を再配分する方法だが、まずはメディア別に総視聴時間に対するそのメディアの比率で分ける。話をわかりやすくするために、ここでは税収を6兆円とした上で、TV:ネット:紙媒体:その他とわける。すると各業界が受け取る再配分額はそれぞれTV3兆円、ネット1兆円:紙媒体1兆円:その他1兆円となる。

あとはその業界ごとに再配分ルールを決めて分けてもらえばいい。ここで末端への配布責任は各業界に振ってしまったので、ここではネットの場合だけ考えてみる。

一番納得感の高い方法は、総視聴時間 * (1 - 引用率)/1 というものだろう。これであれば、2chまとめサイトや他サイトの紹介サイトばかりが高収益を上げるということはありえなくなる。それは技術的に簡単だというつもりは決して無いが、TVなどと比べてネットにおける統計の精度というのはずっと高く、不可能ではない。

このやり方であれば、今まで通り視聴は無料でありながら、「広告主のためのコンテンツ」ではなく、「視聴者のためのコンテンツ」に対して代金が支払われる仕組みとなる。かつてはそのようなことは夢物語だった、今ではそれを実装する技術はすでにある。そろそろ検討してみてもよいのではないか。

Dan the Advertise(d|r)