献本御礼。
実に読みやすい本だった。これが新書だったらもっと薦めやすいのだが....
本書「テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか」は、日本のTV業界がなぜインターネットの利用に及び腰なのかを、実にわかりやすく解説した一冊。著者はその理由を7つにまとめ、それぞれに一章を割り当てることでTV局にまつわる問題を浮き彫りにする。
目次
ひとことでまとめれば、「他の連中においしいところを持って行かれたくない」ということになる。章ごとに言い直せば、
- 通信屋においしいところをもっていかれたくない。
- 系列外においしいところをもっていかれたくない。
- NHKにおいしいところをもっていかれたくない。
- ネットにおいしいところをもっていかれたくない。
- 家電屋においしいところをもっていかれたくない。
- 制作会社においしいところをもっていかれたくない。
- 政府においしいところをもっていかれたくない。
ということになる。なお、本書における「主語」は民放キー局。だからNHKも「おいしいところをもっていこうとする嫌なやつ」リストに入っている。
要は、気前が悪いのだ、日本の民放というのは。
これらの「嫌いなものリスト」は、いずれも本来民放の最大の 味方となりうる存在で、現在でも民放キー局これらの「嫌なやつら」とおつきあいはある。しかし彼らが嫌な奴らに渡すのは、頭と尻尾だけ。これが現況である。もっと詳しくお知りになりたい方は本書をお読みになるべきだろう。TVの視聴と同じぐらい楽に読める本である。
ただし、本書は「なぜ嫌いか」の解説は充分でも、「どのような経緯を経て嫌いになっていたのか」という分析が不十分で、そして「どうすれば好きになるか」という提案に至ってはほとんどない。定価1575円の本としてこれはどうかと思ってしまう。冒頭で「これが新書ならもっと薦めやすいのに」と言ったのはそのためである。この点に関しては、
池田信夫 blog テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか全体に取材が甘く、こうした動きの中でだれがどう政治的に動いたのか、といった背景が描かれていないため、業界ルポとしては物足りない。
という意見に同感である。このあたりが、無料のTVと違って有料の書籍ではつらい所だと思う。本書は書き下ろしのようだが、むしろ日経ビジネスなどで各章ごとに短期集中連載した上で、それをまとめた上加筆訂正する形で出した方がよかったのではないか。TVの再放送ではないが。
とはいえ、現況のレポートとしてはよくまとまっているので、とにかく今民放で何が起きているのかを知りたい人にはお薦めの一冊ではある。少なくとも、TVをぼーっと見ているよりは面白いし役に立つ。
TVは無料だといっても、それがくだらなければ何より貴重な時間を無駄にするのだ。TVを毎日だらだら見ている人たちはそれに気がついているのだろうか?
Dan the Infrequent TV Watcher
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