このタイトルを見て、「わたしには関係ない」と思った方、ちょっとお待ちください。

もしあなたが日本人なら、年間7万円は確実に放射線を利用しているはずなのですから。

本書「放射線利用の基礎知識」は、タイトルどおり、放射線とは何かを知り、どこでどう利用されているかを知るための本。ここまで直球ストレートなタイトルは、「放射能アレルギー」の強い日本では諸刃の剣にも思えるのだが、私はそこに著者の誠実さを感じる。

目次
  • 第1章 身のまわりの放射線
  • 第2章 放射線の基礎をおさえる
  • 第3章 放射線でつくる、加工する
  • 第4章 放射線で「みる」「測る」
  • 第5章 食べものと放射線
  • 第6章 医療と放射線

著者の東嶋和子は、立花隆や竹内薫ほど有名ではないが、ブルーバックスの常連サイエンスライターで、力作「死因事典」もこの人による。立花隆(ただし(前世紀|全盛期)のネ)の圧倒感、竹内薫の洒脱さはないが、きっちりと取材し、かっちりと文献に当たり、そしてしっかりわかりやすくまとめるという点では、日本におけるサイエンスライティングのひな形にしてもいい人である。特に膨大な数字を「読者をおどさず」地の文に織り込むというという点に関しては、地味だけに素晴らしい。

その彼女が本書を著した理由が、以下である。

ものを怖がらな過ぎたり、
怖がりすぎたりするのはやさしいが、
正当に怖がることはなかなかむつかしい(寺田寅彦)
放射線を「正当に怖がる」ためにも、放射線利用を知る私の旅にしばしばおつきあいいただきたい。

今はやりの「リテラシー」という言葉は、「正当に怖がる能力」ということになるだろう。それではあなたの放射線リテラシーがどれくらいあるのか、簡単なクイズを用意してみた。答えはしばらくたってから本entryへのコメントとして掲載する予定だ。

  1. 以下のうち、最も放射線が強いのは?
    1. マンションの部屋の中(東京都江東区)
    2. 砂浜(葛西臨海公園)
    3. 銀座通り
    4. 新幹線のぞみ号の中
  2. 以下のうち体内被爆の寄与が最も大きいアイソトープはどれ?
    1. C14
    2. K40
    3. Co60
    4. O16
  3. 自然放射線と医療放射線の被爆量の割合の世界平均は?
    1. 3:1
    2. 2:1
    3. 1:1
    4. 1:2
  4. それでは、日本平均は?
    1. 3:1
    2. 2:1
    3. 1:1
    4. 1:2
  5. 1Bqは何Sv?

プロでも何も参照しなければ全問正解は難しいのではないか?ちなみに私は最後の問題を除いて全部不正解。念のため、本書にこういうクイズがあるわけではありません。私が本書から作ったものです。

それにしても、驚いたのは放射線利用の市場規模の大きさ。冒頭を読んだ人ならおわかりのとおり、その額なんと8兆6000億円。原子力エネルギー利用の7兆4000億円より大きいのだ。もちろん広告や出版よりも大きい。これが合州国になると、エネルギーが900億ドル、放射線が3300億ドルで放射線利用が3倍近い。我々はすでに放射線のヘビーユーザーなのである。

にも関わらず、これほど怖がられているものも珍しい。アンケートを取るとタバコや酒よりも放射線の方が怖いという人が多いことからもわかる。いやはや、正当に怖がるというのはなかなか大変だ。私自身「知っているつもり」だったが、これほど知らなかったとは。

いや、恥ずかしがる必要はない。著者の東嶋氏だって知らなかったのだし、知らなかった故に本書を著したのだから。

知らない間に放射線を利用している全ての人、必読。

Dan the Radioactive Man