「 人体 失敗の進化史」の遠藤節が苦手な人でも、本書ならいけるかも知れない。
本書、「「退化」の進化学」は、「人体 失敗の進化史」と同じく、ヒト(H. Sapiens Sapiens)の「退化」のありようを解説した一冊。ただし、目次を見ればわかるとおり、その趣は大いに異なる。
目次- 第1章 「退化」の進化学
- 第2章 上陸して―四億年前から
- 第3章 哺乳類から―二億年前から
- 第4章 サルとなって―七〇〇〇万年前から
- 第5章 類人猿より―三〇〇〇万年前から
- 第6章 木からおりて―七〇〇万年前から
- 第7章 ヒトになる―二五〇万年前から
- 第8章 男と女のはざま―誕生前から
- 終章 まとめにかえて
「人体 失敗の進化史」においては、「失敗」という言葉からもわかるとおり、著者の「進化史観」が多いに反映されているのだが、本書「「退化」の進化学」では、史観をなるべく排して、淡々とヒトの退化を時系列順にまとめている。どちらが面白いかといえば遠藤節だが、どちらがわかりやすいかと言えば本書である。
もう一つ赴きとして異なるのは、遠藤があくまでヒトを数ある動物のうちの一つとして捉えているのに対し、本書においてはあくまで中心はヒトで、他の動物はその参照として登場すること。ヒトが中心のおかげか、ヒトに関する統計はこちらの方が断然充実しており、「奇形」、すなわち「先祖帰り」の例がいかに普通なのかということも数字を交えてさりげなく紹介している。
ヒトの退化ぶりが気になる人は、双方とも入手して読み比べてみると面白いだろう。
あと、こうなってくるとさらに欲しくなってくるのが生化学的な退化論。いつ必須アミノ酸が必須になったかとか、アスコルビン酸が「ビタミン」になったかとか。残念ながら両書とも退化の考察はあくまで解剖学的見地、すなわち「肉眼でわかる退化ぶり」に留まっているので。
Dan the Degenerating Man
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