これを読んで思い出したのが、こちら。
松浦晋也のL/D: 「はやぶさ2」その6:安いことは悪いこと??こんな状況では、「はやぶさ2」は安い、というのはむしろ計画を通すのにはデメリットとなる。必要なのは大きくて重くて開発に長期間がかかって、宇宙産業に長期間に渡って大きな金額を落とすことが出来る計画だということになってしまうからだ。
知らない人のためにちょっとだけシリーズ解説をすると、「勇午」は「外相が薦める傑作マンガ10冊」にも見事入った冒険活劇。世界をまたにかける主人公という意味では、007とかゴルゴ13とかの系列なのだけど、主人公はスパイでもスナイパーでもなくてニゴシエイター(交渉人)。はっきりいってこの手の冒険活劇の中では今一番面白いと思う。
で、この東京・種子島編のテーマは宇宙開発。再打ち上げ可能なロケットを開発した民間宇宙開発ベンチャーを、偵察衛星技術の拡散を阻止したい連邦政府が根回ししてこのベンチャーを潰してしまったというのがこの物語の背景で、そんな流れでH-IIAも登場する。のだけど....
打ち上げた当日に静止軌道までたどりつくことはありえませんから、残念!
静止衛星は、静止軌道にのせるまでが結構大変で、まず大気圏脱出後に地球にずっと近い軌道にあげといて(ここまでは当日判明)、それから遷移軌道にのせて、そこからゆっくり静止軌道に乗せるという手法を取るので、かれこれ2,3週間から1月におよぶ長旅になる。詳しくはこちら。一月前の12月18日に打ち上がったきく8号も、静止軌道投入は今月の9日だった。
だけど、その日に打ち上げの正否が判明しないと、お話のつじつまがあわないのですな。低軌道(のはずだけど諸元不明)の情報収集衛星にしとけばよかったのに。
どうして緻密なストーリーを誇るはずの物語で、こういう「事故」がおこっちゃうのかなあというのがまず一点。
あともう一点は、宇宙開発というのはそもそも発祥が軍で、今でも「軍尊民卑」なのがグローバルスタンダードだということ。にもかかわらず、なぜかこの現状をきちんと紹介した本は意外に少ないように思う。「日本の宇宙開発は100%平和利用だぞ〜」という紹介がちらっとあってそれでおしまい。もっとも日本もスパイ、失礼、情報収集衛星を打ち上げたのでこの点では「ふつうの国」になったのだけど。その意味では、「勇午」の視点は悪くなかったと思う。
で、話をJAXAに戻す。
松浦晋也のL/D: 「はやぶさ2」その6:安いことは悪いこと??国民からすればとんでもないふざけた税金の浪費だ。ところが、関係者は大まじめに、それは浪費ではなく日本にとって必要な産業の維持であり、正義であると信じている。
こうなると、やはりお得意様はやはり軍事、もとい防衛と公共事業、ということになってしまうのだろうか。とりあえず情報収集衛星はもう「定期便」になることが決定したようなものだし(目的が目的だけに寿命が短い)、NAVSTAR(現代のGPSの衛星;もともと軍用)、ガリレオに対抗して日本独自の「ばしょえり」をやろう....なんてことになるのかしらん、と思いきや....
グローバル・ポジショニング・システム - Wikipedia日本ではその後、内閣官房に測位・地理情報システム等推進会議が設置され、2006年3月には「準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針」を発表した。それによると、国家が衛星測位の重要性を認識し、民間の資金負担がないとしても、国家が衛星測位システムを整備することを宣言している。
うむむ、JAXAにISAS的なものが残る余裕がぐんぐん少なくなっているような....それに、衛星測地システムの世界でもGSM対PDCみたいなことにならなけりゃいいのだけど。
Dan the Man @ the Bottom of the Gravity Well
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