その「本が好き!」で申し込んだのがこちら。

著者の自画自賛が全くいやみにならないほど面白かった。

あとがき
もちろん今の私にも脳科学講義を行うことはできますが、『進化しすぎた脳』は、"現在の私"には不可能な講義スタイルで貫かれています。目の眩むようなグルーヴ感に、こちらがうきうきとしてきます。

本書「進化しすぎた脳」、脳科学のホープ池谷裕二が、中高生に対して行った講義の講義録。本書が400ページもあるのはそのため。書き下ろしであればその半分になってしまっていただろう。

目次
  • 第1章 人間は脳の力を使いこなせていない
  • 第2章 人間は脳の解釈から逃れられない
  • 第3章 人間はあいまいな記憶しかもてない
  • 第4章 人間は進化のプロセスを進化させる
  • 第5章 僕たちはなぜ脳科学を研究するのか

    この分量が、本書の「グルーヴ感」に欠かせない。本書には多くの図が登場するが、これらの図のほとんどは(おそらく著者自身の)手書き。正直あまりうまいとはいえない。が、それが本書の臨場感を高めている。池谷先生が読者の目の前で講義しているような心地よい錯覚を得る事ができるのだ。

    また、本書は同じ講義でも、講師から一方的に講義するのではなく、8名という少数の中高生と対話する形式を取っている。だから「講義」録というより、「対話録」なのだけど、私はこの形式の科学書がもっと増えて欲しいと思っている。これほど科学の面白さを体感できる形式もないからだ。科学書こそ、モノローグよりダイアローグが似合う。

    もっとも、誰でもダイアローグが得意なわけではない。それが「うざい」と思う研究者も少なくないのではないか。この点池谷先生は"Combat Proven"で、「海馬-脳は疲れない」は糸井重里と、「頭は必ずよくなる」では日垣隆とそれぞれ対談していて、そのどちらも実に面白い。これらの「対談のプロ」との対談も面白いのだけど、やはり一番面白いのは頭の柔らかい中高生との対話集である本書だ。

    池谷先生に限らず、脳科学系の人はお話上手なことが多いような気がする。しかし「もう引退して久しい」養老孟司とか、今や研究室にいる時間よりスタジオにいる時間が長いんじゃないかと思われる茂木健一郎あたりと比べると、ネタの鮮度がまるで違う。池谷裕二は売れっ子ではあるが(本書も第二版だった。初版と10日しか離れていない)第一線の研究者なのだ。

    こういう本が1000円ちょっとで買えるなんて、日本も捨てたもんじゃない。中高生のみなさん、是非買ってもらって下さい。そうでない人も、中高生の頃の頭のやわらかさを取り戻せるかも知れません。「進化しすぎた脳」に、使い過ぎというのはありえないのですから。

    Dan the Prisoner of the Brain



    • 著:池谷 裕二
    • 出版社:講談社
    • 定価:1050円(税込み)
    進化しすぎた脳
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