ギザお買い得。

訳本が原著の1/6の値段で買えるなんて。日本っていいなあと思える瞬間だ。

本書「物理と数学の不思議な関係」は、応用数学の本。主に物理中心なのだが、それ以外の応用も出てくる。

目次
  1. 数学 宇宙の姿を映す鏡 - 物理と数学の不思議な関係
  2. 自然は隙間を嫌うか - アリストテレスからガラスの構造まで
  3. 時空を支配する幾何学の正体 - ユークリッドから一般相対性理論まで
  4. 実用主義の絶大な威力 - 弦の爪弾きから固体中の電子まで
  5. a×bがb×aでなくなるとき - 整数から四元数まで…
  6. 準周期的という絶妙な配列パターン - タイル張りから準結晶まで
  7. 方程式は単純、解は複雑 - ニュートンから量子カオスまで
  8. 絶対役に立ちそうもない理論の効用 - ガロアからスーパーストリングまで
  9. ミクロとマクロをつなぐ架け橋 - コイン投げからエントロピーまで
  10. イボイノシシの赤ん坊は二重らせんの夢を見るか - ケーニヒスベルクの橋からポリマーまで
  11. 幾何学は自然を模倣できるか - 放物線からフラクトンまで
  12. 一点における速度の深遠な意味 - ゼノンからシュレーディンガーまで

本書の特長は、その紹介の範囲の広さ。それぞれの章で扱っている話題は、それだけで何冊も本がかけるほど応用範囲が広い。そして実際にそれぞれの分野に関する本は何冊も出ていて、こうなると「一体どれを読んだやら」ということになる。

そんな中で、本書は「応用数学はじめの一冊」にふさわしい本だ。扱う範囲が広いだけ合って決して薄い本ではないが、それでも文庫一冊に収まっているコンパクトさ。各章の独立性も高く、最初から最後まで読み通すという読み方をしなくてもいい点もよい。とりあえず斜め読みして、気に入った章を読み込んで、そうしてから専門書を漁る。本書にはそうした読み方がよく似合う。

しかも、訳者は青木薫。「フェルマーの最終定理」や「ビッグバン宇宙論」などのSimon Singhの作品は全部彼女が訳しているし、「世界でもっとも美しい10の科学実験」も彼女の訳。今や彼女がその本を訳していること自体が、その本の品質保証になっている感すらある。

これで税込み1,050円なのだから、日本の読者は幸いだ。早川文庫GJ!

数学は数学そのものも面白いのだけど、なぜかとっても役にも立つ。面白くてためになることにかけて、数学の右にでるものはないようだ。義務教育で数学を扱わない国がないのもうなずける。これほど「おいしい」学が他にあるだろうか。

とはいえ、「おもしろい」方の数学、もう少し具体的に言うと「数学を面白がることを飯の種」にする数学は、文字通りあさっての方ぐらいまでいってしまっている。そこまで行ける人はとても少ない。彼ら数学者だけ見ていると、数学のおもしさより厳しさの方がどうしても勝ってしまう。「おもしろさ」で数学へ誘うのにはだから限界がある。

だから、「役に立つ」で数学へ誘うのも、同じぐらい重要なプロパガンダだと私は思う。本blogではどちらかというと「おもしろ」系の数学関連書を紹介することが多かったのだけど、これからは「役に立つ」系も積極的に取り上げて行きたい。本書はその嚆矢にふさわしい一冊だ。

Dan the Mathphilia