すみません。リチャード・クーと聞いて、私が思い出すのはこちらの方なのです。

インターネット学部:弾さんはひょっとしてリチャードクーを知らないのか? - livedoor Blog(ブログ)
弾さんほどの知的な方なら、リチャード・クーが提唱している「バランスシート不況」くらい知っていると思っていました。

これの解説を書いているのが、リチャード・クーその人です。

本書「田宮模型の仕事」は、タイトルどおり、株式会社タミヤの社長である田宮俊作その人が、タミヤについて書いた本。リチャード・クーでなくとも著者に惚れる一冊です。

目次
  • 第1章 木製模型との幸せな出会い
  • 第2章 泣く泣くプラモデル製作に転向する
  • 第3章 プラモデルは金型が命
  • 第4章 取材こそ模型づくりの基本
  • 第5章 とことんやるのがホビーの世界
  • 第6章 山あり谷ありミニ四駆の十八年間
  • 終章 一外国人の見たタミヤ模型 - 二十一世紀のタミヤ

しかしタミヤのような会社が、まだ日本が先進国でなかった頃からあるというのは、日本の特長の一つなのではないでしょうか。

プラモデルというのは、それを買って組み立てても腹がふくれるものではありません。それでいて、製造には最先端の技術が必要です。そんなものを作っている会社が、まだ日本が貧乏だった頃から存在するのです。

これこそが、中国と日本の決定的な違いのように思えます。もちろん今では中国もプラスティック製の玩具をたくさん作っています。しかしそれはコピー製品か、海外の企業が作らせたかのどちらかです。自分たちでおもちゃを作ってみようという人は少なくとも中国の外からは見えません。

21世紀に最も付加価値を生み出す産業とは何でしょうか?

私は、「ひまつぶし産業」だと考えています。田宮はまだ地味な例ですが、任天堂などはその顕著な例です。ソニーも実はそうです。白モノ以外の家電はすべて「ひまつぶし」といってしまえば言い過ぎでしょうか。クルマだって、田舎や合州国ならとにかく、日本の都会では実用性より趣味の部分が大きかったりする。

面白いことに、こうした「ひまつぶし産業」というのは、付加価値とか生産性とかといった考えを優先するとうまく行かないのです。いかに「のめりこむか」ということが先で、のめりこんだらいつの魔に高付加価値産業になっていたという形でないと駄目なのです。

このあたりに、日本に限らず今後の産業を占うヒントがあるように思えます。

もっとも、そういう読み方をしない方が、本書は楽しめると思います。タミヤは天下国家のためにプラモやミニ四駆を作っているのではなく、あくまで「こどもたち」のために作っているのですから。もちろんここでいう「こどもたち」には、リチャード・クーさんのような方々も含まれています。

もっとも、私はといえば、プラモにはまりそうな時期には金がなく、金がある頃には他の趣味を見いだしていたのでプラモは趣味にならなかったのですが、「趣味はプラモです」と言われると趣味がいい方だなあとは思わずにいられません。本書を読めば、プラモがますます素敵な趣味に見えること請け合いです。

趣味がいい全ての人におすすめの一冊。

Dan the Hobbyist