こちらも「本が好き!」で申し込んだ一冊。なのだけど....
これが発表された1967年ならとにかく、40年後の今傑作といわれると、どうなのだろうか。
百年の孤独、四十年後の退屈と言ってしまってはあまりに失礼だろうか。
【書評】 百年の孤独:本が好き! - livedoor Blogこの小説が最初に翻訳された頃、ガルシア=マルケスの世界を表現するために「魔術的リアリズム」という言葉がよく使われました。それは、現実にはありえないこと、起こりそうもないことを、実にさらっと自然に書いてしまう文体とストーリー・テリングのせいであったと思います。今回久しぶりに読み返しましたが、この世界を堪能しました。素晴らしいです。今後数世紀にわたって読み継がれる、20世紀の文化遺産の一つであることは間違いありません。
確かにリアリズムはすごいとは思う。この世のどこにもない町マコンドを、それも100年分あたかも見てきたように描く虚構力は圧巻だ。最後に登場人物自らが自分たちの歴史が虚構であったことを見いだすのも新鮮だったのかも知れない。もし私がこの本を他の本を読む前に読んでいたら、驚愕の上に感嘆していたのかも知れない。
しかし、私はすでに筒井康隆をほぼ全部読んでしまっている。たとえば「虚構船団」は描写がリアルなだけではなく、描写の対象がアンリアルだ。その点本当にあってもおかしくないマコンドは、本当にあったらとんでもない文房具軍団やクォールの鼬たちと比べるとずいぶんと色あせたものに見えてしまう。登場人物が自らを虚構の産物だと気がつく構図も、今となってはあちこちで使われて技法の一つとなってしまっている。
もちろん、本書は虚構船団よりずっと前の作品で、筒井康隆自身エッセイで(どのエッセイかは失念)マルケスのことを絶賛していたし、本作品を読んだ作家達は筒井に限らず多かれ少なかれ影響を受けているのだろう。そういった意味で本作品には歴史的な意味はあると思う。が、それを差し引くとなんと冗長で退屈な作品なのかとも思わずにはいられない。
子供のころ憧れていたけど買ってもらえなかったおもちゃを、大人になってから買ってみたら意外と退屈だった、そんな感想なのである。映画に例えると、Star WarsのEpisode I,II,IIIを見てからIV,V,VIを見たような感じだ。現在のアニメを見てから1970年代のアニメを見るでもいいし、戦隊モノを逆時系列で見るでもいいだろう。当時は凄かったが、今見るとやはり初期の作品はどこか色あせている。
小説の進歩を讃えるべきか、読んだ順序を嘆くべきか。はたまた私の純文学に対する感度の鈍さを呪うべきか。
不思議なことに、これが純文学ではなくSFとなると、名作に関してはその頃書かれた作品でもむしろ色あせ具合を楽しむことすら出来る。例えば今ではありえない冷戦だとか。コンピュータ以前に考案された陽電子頭脳だとか。それはおそらくそこに描かれたアンリアルが、アンリアルなままだからだろう。もちろん今となっては全く通用しない作品も少なくないのだが。
本作品には、残念ながらそういうアンリアルはあまりない。それゆえ純文学ということなのだろうが、それゆえ私には純文学がSFほど楽しめないのだとも思う。そういえば、SFってまだノーベル文学賞を取っていないのだっけ?
Webを見回しても絶讃ばかりの書評に、百年の孤独の代わりに純文学に対する百光年の断絶を感じてしまいました。本作品はもしかしたら純文学を楽しめるかどうかの試金石になるのかも知れません。
Dan el Revisor Solitario
百年の孤独
- 著:G・ガルシア=マルケス
- 出版社:新潮社
- 定価:2940円
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