ちょーさん熱く語る。
本書「なぜ株式投資はもうからないのか」は、金融のプロにしてブロガーである保田隆明が、日本の株式市場に対して歯に衣を着せずに語った一冊である。
目次:ちょーちょーちょーいい感じ:心強い日経新聞の記事 - より- 第1章 そもそも株式投資とは何か
- 株式投資に充てられる資産はアメリカ人でも個人金融資産の3割
- 我々は株式市場に強制連行されている
- 本業不調の銀行が投信販売に走る
- 狙われる我々の個人金融資産
- 持ち合い解消の影響
- 日本の株式市場の構造
- 株式投資での平均年率リターンは5〜10%
- 第2章 株式投資の理想と現実、そしてワナ
- 悲しいかな、結局お金持ち優位にできている世界
- 勉強すれば儲かるのワナ
- 行動ファイナンスと感情コントロールのワナ
- 株式投資雑誌のワナ
- チャートは手相
- でも、インサイダー情報が入手できれば…?
- 人が周りに株式購入を勧めるワケ
- 第3章 機関投資家と証券会社の生態を知る
- ヘッジファンドも基本に忠実
- 未上場株への投資機会はプロだけに与えられた特権
- 信用取引でも機関投資家が有利
- IRのワナ:個人投資家向けIRと機関投資家向けIRは異なる
- 株式アナリストは大口投資家の便益を図る人達である
- 証券会社のフィー体系と自分勝手さ
- 証券会社にとって怖いのは一般投資家の株離れ
- 第4章 日本の新興市場における問題点
- 儲かれば何でもありの証券会社と取引所
- 新設新興市場は不要だ
- 証券会社が主幹事獲得を目指す理由
- IPO時の株価は理論的株価よりも2〜3割安い
- 新規上場株の歪な流動性が巻き起こす需給逼迫
- 新興市場は一芸入試の場である
- ストップ高爆弾をご存知だろうか
- 第5章 今後の株式投資を考える
- 参加者同士が有機的に結びついている世界:インターネットと株式市場
- 株式市場はロングテールの世界でもある
- 投資家の行動分析に鍵がある
- 投資家による銘柄分類
- そもそも何のために株式投資をするのか
- でも、やっぱり株式投資をやるなら
- のん気に株式投資なんてしている場合ではなく、資産を守ることが最重要かも…
- 初等教育における金融教育の是非
第1章から第4章で語られていることは、類書も多い。特に株のための臆病者入門とは共通項も多く結論も多い。両者とも、株式市場が決してフェアでないことをあの手この手で述べている。
しかし、その姿勢は正反対とも言える。橘玲は、株式市場を「外から」冷たく見ているのに対し、保田は「中から」、少なくとも「瀬戸際」から熱く鋭い視線を送っている。橘が「株式市場はフェアでないから、素人は一番フェアなインデックスを買っとけ」という立場なら「株式市場はフェアでないから使いづらい。だからフェアにするにはどうしたらいいのか一緒に考えませんか」という立場だ。
それが最も如実に反映されているのが、第5章だ。特にインターネットと株式市場に関しては、ブロガー保田の面目躍如である。現時点において、株式市場にとってのインターネットは、単に売買を効率化する道具に留まっているが、保田はインターネットが株式市場にもっと質的な変化をもたらすことを期待している。
私はその部分を一番読みたかったのだが、残念ながらただでさえそれほど紙幅がない新書というメディアの、1章しかそこに割いていない。一般書という制約を強く意識しすぎたのか。このことは学者のウソにも共通した問題である。
はっきり言って、第1章から第4章までは、他にも書き手はいくらでもいる。確かにちょー節でそれを語られるのは楽しいけれど、語り口調を引くとそこに新しい知見というのはそれほど見られない。第1章から第4章の部分を1章にまとめて、残りは全て第5章の内容にあててもよかったのではいだろうか。これも「なぜ株式投資はもうからないのか」というタイトルの呪縛だろうか。
それでも、この第5章を読むためだけでも、本書は買いである。株式投資以上に読書というのは儲からないし、もちろん本書を読んでも儲からない(といっても損は上場されていた頃のライブドア一株にしかならないのだが)。しかし見識が広がることは確かであり、そしてそれは時に儲ける以上に満足感を得られる経験でもある。
株式市場で儲けたいと思っている人も、株式市場なんてろくなもんじゃないと思っているひとも、是非ご一読を。
Dan the Investor
追記:ここで書評に用いたのは、私がAmazonに予約注文しておいたものだが、本日献本も到着した模様。「模様」と書いたのは、受け取った妻が中身だけ出して袋ごと添え状を捨ててしまったから。ありがとうございます&ごめんなさい>ちょーさん
いつもありがとうございます。
はっきり言って誤変換直りませんね:-)
Dan the Typo Generator