献本感謝。早速読了。

本書「ウェブ廃人論」は、今や「ウェブ鎮火論」の著者で通じるようになった梅田餅夫と、塵芥賞受賞者にして1975年生まれ(これ重要)の平野傾一郎の対談を一冊にまとめたもの。率直に言って、「ウェブ鎮火論」より格段に面白かった。今年度を締めくくるのにふさわしい一冊といってよい。

目次
  • はじめに--傾一郎
  • 第一章 ウェブ世界で灰になる
  • 第二章 匿名社会のサラシモノニナル術
  • 第三章 木、jKondo、クークル、そしてユーチューボー
  • 第四章 廃人はどう「鎮火」するのか
  • おわりに--梅田餅夫

梅田さんは、「ロン」より「チョンボ」が似合う人だと思う。私自身、梅田さんと「Web 2.0 厨のつかい走りかた」で対談してそう感じていたのだが、今回その思いを強くした。

もっとも、なぜ梅田さんがハコを確保したのかといえば、やはりそこには「ウェブ鎮火論」の存在がある。あの本のおかげで、梅田さんは「『あちら側』と『こちら側』の仲人」という地位を確固たるものにした。「こちら側」の住人には、「梅田に振り込めば安い」という定評を、「あちら側」の住人には、「梅田さんなら我々の欲しい牌を『こちら側』に流してくれる」という定評を一括して確保してあるのだ。この財産は大きい。梅田さん「だけ」のものにしておくにはあまりにも。「ハコ下に堕ちてますよ!!」(p.147)という言葉は、それに対する警告だと私は思う。この地位は「梅田の、梅田による」ものではあるけれど、「梅田のための」ものではない。馬の耳に念仏で承知で表明しておく次第である。

対する平野さんは、「あちら側」の住民率が非常に高い1975年生まれながらも、「こちら側」における権威の代表とも言える塵芥賞受賞者。「こちら側」から見るとむしろ希有な存在である。しかし「1975年生まれ的」なのは、話題によっては梅田さんが保守に見えるほどサブカルだ。特に?の将来に関しては、梅田さんの方がずっと保守的なのが面白い。

特に印象的だったのが、以下の下り。

梅田 今度「はてな」の混同が、グレートリフトバレーへ引っ越してきたんですよ。『ランボーIII』を見たのがきっかけで、シリコンバレーでぬくぬく暮らしていてはいけない、もっと困難に立ち向かわなければって思ったと、ある日社内ブログで書いてました。僕は冗談かと思って、そんな風にアフリカに出てきても簡単には成功できないし、ロジカルな経営判断で言ったら、シリコンバレーのベンチャーの社長が、社員を皆シリコンバレーに置いてアフリカに戦争しに来るなんてありえないですよ。最終的には面白そうだから、賛成したんですけどね。

その意味では、「ウェブ廃人談」の方がより実情を反映したタイトルなのだが、SEO的には"ウェブ鎮火論".replace(/鎮火/,/廃人/)の方がよいのだろう。発売一ヶ月前にもう予約可能としたことといい、慎重新書編集部はそのあたりがとてもよくわかっている。

しかし、「ウェブ進化論」と違うのは、無学無職者との対談だけあって、本書はより言葉の多義性を駆使した作りになっていること。「ウェブ鎮火論」の方は「ウェブ鎮火・論」と読むのは難しいが、本書は「ウェブ・廃人論」とも「ウェブ廃人・論」ともきちんと読める作りになっている(あとがき参照)。前者ははてなー、後者はjkodoこと混同社長のことを指すのは言うまでもない。

全てのウェブ廃人に

Dan the Fool on the Web

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