すでにガ島通信あたりですでに取り上げられているかと思いきやまだのようなので。

本書「新聞社」は、現在新聞が抱える問題を、新聞を経営する立場から取り上げた本。新聞批判本は少なくないし、そのうちのかなりの部分は現記者ないし元記者によるものなのだが、本書は元役員の立場から書かれれており、その点が貴重である。著者の河内氏は、毎日新聞の記者からはじまって、幾度もの異動を経て最後は常務取締役という、社内の叩き上げだ。新聞「社」を書くにあたって、これほどふさわしい経歴を持つ人もいないだろう。

目次 - http://www.shinchosha.co.jp/book/610205/より抜粋
  • 第一章 新聞の危機、その諸相
  • 第二章 部数至上主義の虚妄
  • 第三章 新聞と放送、メディアの独占
  • 第四章 新聞の再生はあるのか
  • 第五章 IT社会と新聞の未来図
  • 本書の今ひとつの特徴は、本書が単なる新聞業界の批判本にとどまらず、経営の立場から見た業界再編の構想が語られていることである。それがどんな構想なのかは本書を見てのお楽しみだが、この点だけでも本書は買いである。値段も新潮新書標準価格の700円。新聞の購読料と比べて何と安い事か。そうそう。本書は購読料の点にもつっこみを入れている。メディア批判の中でこの点が少ないことを私はいつも疑問に思っていたが、やっと「まともに語れる人」が出てきたという印象を受けた。

    新聞を取っている人にも取っていない人にも、新聞の現在過去未来を俯瞰するには最適の一冊。洗剤の代わりに本書を配るのであれば、私も新聞購読を少しは考えたかも。

    Dan the Newspaper Nonsubscriber