うち最新作がこちら。

Science Xitalk - サイエンス・サイトークは、日垣隆と有村美香が、科学者たちをスタジオに呼んでインタビューするラジオ番組。ラジオがなくてもありがたいことにpodcastもされている。

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各界のトップランナーへのインタビューは、それだけで面白いものだ。外しようがないだけに、世の中にはこの手のトップランナーインタビューを本にまとめた枚挙に暇がないはずなのだが、なぜか日本では科学者に対するそれは希有である。すぐに思いつくのは、立花隆が科学朝日 - SCIaSで続けていた連載をまとめた、「サイエンス・ナウ」から「100億年の旅」に至るシリーズがあるのだが、ちょうどそれが終わる頃にサイエンス・サイトークがはじまって、なんとか途切れずに来たという印象がある。

理由として考えられるのは、たいていのインタビューが一本では本にまとめるには分量として不足することがある。ノーベル賞受賞ぐらいになれば、「 精神と物質」のように単独インタビューで本にまでしてもらえるが、そうでなければ複数のインタビューをまとめるしかない。それだけのインタビューを確保するには、フローを維持する仕組みが必要で、それが立花隆にとっての科学朝日 - SCIaSであったのだが、これは媒体そのものがなくなってしまった。サイエンス・サイトークはどうだろうか。

長く続ける余地ということに関しては、サイエンス・サイトークは「立花シリーズ」よりも有利だとは思う。「立花シリーズ」は科学者と立花隆のガチンコ対決で、これはインタビュワーを大いに消耗させる行為だが、サイエンス・サイトークの方は、日垣隆だけではなく有村美香、そしてスタジオのギャラリーがいる。負荷が分散されているのである。負荷が分散されているだけあって、やりとりもよりカジュアルで、内容もよりわかりやすいものになっている。

もっとも、口当たりがいいということは、「原酒」の味がある程度失われている可能性を否定できず、その意味ではもっとガチンコで科学者と勝負できるインタビューワーが出てきて欲しいと思う。立花隆が失われた現況--まだ故人でもないのに失礼だとは思うが、少なくとも「サイエンス・ナウ」の頃の立花は期待できないだろう--は、その意味ではまだ埋められていない。もっとも、理研ニュースのように、最近では科学者たちが「卸し」へ経ないで直接一般に向け情報を発信する機会も増えてはいるのだけど、そのことはむしろ「まとめ力」の需要を増しているとも思う。

話をサイエンス・サイトークに戻すと、その「まとめ本」は、現在以下の六冊が刊行されている。

途中で出版社が新潮社からワックに変わったが、まずは出版が続いていることをうれしく思う。しかし首を傾げざるを得ない事が一つある。「頭は必ず良くなる」以降、カバーからゲスト名が消えているのだ。これは一体どういうことなのだろう。同じゲスト名にしても、新潮文庫版では、名前だけではなくゲストが出演した番組タイトルと出演当時の肩書きが書いてあったのだが、「天才のヒラメキを見つけた!」でそれが名前だけになり、そして「頭は必ず良くなる」からは日垣隆の名前のみが表紙に記載されるようになった。これはいったいどういうことなのだろうか。ただただ不可解である。科学者の名前を列挙すると本の売上げが落ちるのだろうか?「メタルカラーの時代」のように、一冊に収録されたインタビューの数が表紙に乗り切らないというのであれば話は別であるが、一冊あたり五名程度であれば、これは必ず載せるべきではないか。

このシリーズは末永くつづいて欲しい、立花隆「亡き」後とあっては特に続いて欲しいと思うだけに、このことが気になって仕方がない。

Dan the Sciencephilia