献本御礼。早速読了。

ハントする者もされる者も、そしてハントを防ぎたい者も読んでおくべき本。

でも、きちんと読めるかな?

本書「プロ・ヘッドハンターが教える デキる一の引き抜き方」は、タイトルどおり、プロのヘッドハンターが、ヘッドハントとは何か、なぜヘッドハントが必要なのかというWhyと、ヘッドハントはどうやって行うのか、そしてされるにはどうしたらいいのかというHowを書いた本。

ヘッドハントされた経験もした経験もある者としてはっきり言えるのは、この本が本物であること。

目次 - 明日香出版社 新刊案内 新刊紹介 プロ・ヘッドハンターが教える デキる人の引き抜き方より要約
  • はじめに
  • 序章 欲しい人材はライバル企業にいる!
  • 第1章 ヘッドハントのすすめ
  • 第2章 必ず成果の上がる採用戦略
  • 第3章 情報を制するものはヘッドハントも制す
  • 第4章 プロが教えるデキる人材の見分け方
  • 第5章 狙った人材を必ず落とすプロの技
  • 終章 ヘッドハントが日本を変える
  • ここでは章のみを取り出したが、リンク先には項レベルまで目次がある。

    本当にデキる人であれば、この目次を読むだけでも本書の行間まで読めるだろう。そういう人は、本書を必要としないのかも知れない。それでも、リトマス試験紙としては使えるし、仕事はデキるけど本書の行間までは読めない人に本書を手渡してもよい。

    本書の要諦は、以下の一言に凝集されている。

    p.21
    それができる人材を入れてしまえばいい。それだけだ。

    そう。ほんと、それだけ。私が遊びより仕事の方がよほど簡単だと思っている理由もそこにある。仕事は他者にやっていただくこともできるが、遊びはそうは行かない。

    ところが、この単純にして明解な真理は、日本の企業のコンセンサスとはなっていないのが不思議なところだ。本書の半分は、その日本の常識、世界の非常識をきちんと指摘する事に当てている。その口調には全く遠慮がない。その遠慮のなさを不遜と受け取った人は、その時点で負けだとはっきり言わせていただく。そもそもヘッドハンターが手のうちを明かすインセンティブはほとんどない。ヘッドハンターは知る人ぞ知る存在でよいのであって、名前を売る理由はほとんどないのだ。そのヘッドハンターが本という公の場でこうはっきり行っているのは、誠意以外の何者でもない。本書を手にしてムカついた人は、鬼手仏心という言葉を改めて辞書で引いてみるべきだろう。

    後半は、具体的なヘッドハンティングのノウハウ紹介にあてられている。正直ここまで手の内を明らかにするとは思わなかった。特に将を射るために馬を射る、すなわちヘッドハントの獲物だけではなくその家族に対するケアまで紹介するのは、現場を知らないと書けない事だ。NDAや雇用契約書のひな形まで用意してあるのは、明日香出版の面目躍如。

    裏を返せば、本書で紹介されたヘッドハンティングの手口は、もうtrade secretではない、ということだ。もう現場は本書の手口の先を行っているはずなのである。だから、本書を「面白い」から「役に立つ」に引き上げるには、本書の行間まで読む必要がある。それが出来て、やっと一人前の人事だろう。

    しかしそこまで読まなくても、本書が確実に役に立つ人々がいる。ヘッドハントされる側である。本blogの読者も大半はHunterではなくthe Huntedだろう。本書によれば -- そして私も同意するが -- もはやヘッドハンターから声がかからないという事実そのものが無能の証しとなりつつある。ハントされるにはどうしたらよいか、ハントの声がかかったらどうするべきか、本書にはそれらも書いてある。というより本書の本当のターゲット読者はそちらにあるといっていい。

    狩場へようこそ。

    Dan the Hunt(er|ed)