献本御礼。

初掲載2007.06.20;販売開始まで更新

力作にして傑作。

本書「Python Cookbook」は、「Python Cookbook (2nd. ed)」を、単に翻訳したのみならず、きちんと日本語化したもの。「Rubyクックブック」との差はいったいなんなのだろうか。

目次 oreilly.co.jp -- Online Catalog: Python クックブック 第2版より
  • 概要
  • 目次
  • 訳者まえがき
  • まえがき
  • 1章 テキスト
  • 2章 ファイル
  • 3章 時間とお金
  • 4章 ショートカット
  • 5章 サーチとソート
  • 6章 オブジェクト指向プログラミング
  • 7章 永続性、データベース
  • 8章 デバッグとテスト
  • 9章 プロセスとスレッド、その同期
  • 10章 システム管理
  • 11章 ユーザインタフェース
  • 12章 XMLの処理
  • 13章 ネットワークプログラミング
  • 14章 ウェブプログラミング
  • 15章 分散プログラミング
  • 付録A Pythonと日本語処理について
  • 索引

見ての通り、クックブックとして抑えておかねばならない話題は、たとえ「中級者」から見て退屈に見えてもきちんと扱っている。いくら毎日作っているからといって、「和食クックブック」から味噌汁の作り方をはしょれないのと同じだ。

ただし、原著にある以下の章は割愛されている。

  1. Programs About Programs
  2. Extending and Embedding
  3. Algorithms
  4. Iterators and Generators
  5. Descriptors, Decorators,and Metaclasses

これらの章が割愛された理由は訳者でない私は憶測するしかないのだが、レシピの多くが他の章で扱った話題を別のやり方で扱う、すなわち「献立がかぶる」(e.g. リスト内包表記;16章の話題であるが4章にも登場する)というのが一つと、これらの章はPerlで言うと黒ヒョウ本に重なる話題であり、別の本として後に分離することを考慮しているのではないかというのが一つ。少なくとも、15章までの献立で、日常いただく料理はこなせるように思う。

とはいえ17章の話題などは、別の機会に別の本でもいいから再掲載してほしくはある。

ページ数こそ、原著より短くなっているが、原著のエッセンスは一滴残らず注いでいる。そのために地の文の活字を少し小さくしているぐらいだ。

素晴らしいのは、本書の訳者たちは、本書をただの翻訳書に留めず、「日本語でPythonの本として第一選択されるに相応しい本」にしようと、原著にさらに磨きをかけていること。

vi 訳者まえがき
翻訳にあたっては、原著の特徴とも言えるAlex Martelliのわけのわからん英語表現や、レシピをウェブサイトから本に落とした際の編集ミス、2.4に対応させる際に生じたと思われるコードのミスを出来る限り廃し、原著よりもわかりやすく、役立つ本を目指した。翻訳チーム内部ではベータ状態のレシピを常用し、それを踏まえて、日本でもっとも困る分野、つまり日本語の処理については、レシピを書き加えた。

この書き加えられた部分に関して、不満がないわけではないが、その心意気やよし、である。上の姿勢は、文芸書であれば原著者に対して失礼だが、技術書に関してはこれこそが正しい姿勢だ。

まあ説教臭いといえば説教臭い。それは本書の責任というより、Pythonの特徴なのだから仕方がない。「まあまあそんな硬い事言わないで」で留まれないのがPythonistasというものだろう。そういったところまで含めて、まさに本書はCookbookかくあるべし、という一冊に仕上がっている。料理だけではなく、店構えまできちんとPythonisqueなのだ。

久しぶりに、原著よりもお薦めの訳本に出会った。値段も4,200円。この品質でこの値段は超お買い得。Pythonユーザーのみならず、技術翻訳の何たるかを知りたい人も、本書は必携の書である。

Dan the Impressed