技術評論社より献本。

これまた書評しにくい一冊。

本書「エンジニアマインド Vol. 5」は、「エンジニアマインド」の第五冊目。それでは「エンジニアマインド」とはどんな雑誌かというと、こういう雑誌を目指しているらしい。

エンジニアマインド

現在のソフトウェア開発は大規模化・短納期化が進み、単なるプログラミングスキルだけでは現場で通用しなくなってきています。エンジニアマインドでは、設計や見積り、品質管理といった開発工程全体に着目し、どうしたらプロジェクトを成功させることができるのか正面から考えます。そして、エンジニアとして充実した毎日を送っていくための方法を追求していきます。

また、最新技術、キャリア、資格などについてもあますことなく紹介する、まさに“SEの必読誌”を目指します。

ひと言で言うと、目指すところはギークのための CanCamらしい。経済学あり、組織学あり。コードがないかと思えば「オリジナルコンパイラを作ろう」なんて記事もあるし、その記事で肩がこったら「ヨガで一息」なんて記事もある。強いて言うと、ライバルはオライリーのMakeといったところか。

となると、考え込んでしまう。このガチガチさはいったいなんなのか、と。

まず、広告。WEB+DB PRESSとほとんど変わらない。版型も厚さも一緒。記事を見れば、確かにスーツを着た人たちの記事も多くて(実際各記事には、寄稿者の写真がついてくる)、より一般よりになっている。が、これじゃむしろ逆効果。なんだかギークに普段の格好で渋谷でナンパさせるようなぎこちなさだ。

そもそも、ギークのための一般誌を、ギークの方だけ向いて作ってもダメ、ダメダメである。関係者各位は、将を射るならまずは馬からという言葉はご存じないのだろうか。ギークたちのカレカノに見せたくなるような紙面になぜ出来ないのか。

このあたりは、クレディットカード、それもゴールドやプラチナのカードを持っていると毎月送られてくる会誌を見習うのがいいだろう。あれは建前としてはカードホルダーに宛てられているが、実際にそれを熱心に見るのはその配偶者たちなのである。「Make」はその点、夫婦やカレカノで読むには適さないものの、親子で読むという愉しみ方が出来る。本書を読んで楽しめるのは、ギーク本人だけだ。そして一般誌に食指をのばすようなギークは、カレカノであれ夫婦であれ親子であれ、「家庭」をすでに持っている。税抜き1580円というのは、私ならとにかく、家庭を持つエンジニアの大半は「夕食のおかずを買ったついでに」買うにはちょっと高く感じるのではないだろうか。

まあ実に技評らしいといえば技評らしい本なのだけど、こういう本を売るのであれば、もう少し視野を広くとってもらいたいものだと思わずにはいられない。

とはいうものの、こうした「ギーク向け一般誌」というのは、結構需要がありそうだという目のつけどころは買う。実際個々の記事は面白い。私が気に入った記事も気に食わない記事も。おかずはいいのだから、あとはどうやってそれを「弁当」としてまとめるかだ。健闘を祈る。

Dan the Reviewer