そのレベルが高いはずの君たち -- 僭越ながら、私自身も勘定に入れとく -- 俺たちが、なまじ楽しいからって手弁当イベントばっかりやっていると、どうなるかって考えてみたことある?

最速廃人研究会 - Web業界の底上げとか崇高な考えがあるなら、お前ら率先して廃業しろよ
お前ら全然凄くないよ。いい加減自覚しろよ。そんで自重しろよ。イベントだ勉強会だ交流だの、レベルの低い連中で集まっても何の意味もねーよ。なまじ仕事になって給料とかもらえてしまうから、ダメなことに気付かないんだよ。

凄い人々しか、業界で食えなくなるんだよ。

すると何がおこるか、といえば、業界が育ちにくくなるんだよ。

仮に、「凄い人」と「凄くない人」の給与が10倍あるとする。このとき、「凄い人」が月200万貰っているとすると、「凄くない人」は月20万貰える。これならなんとか凄くない人も業界内で凄くなろうと切磋琢磨できる。

しかし、「凄い人」が、「俺、月50万でいいっすよ」って言ったら、どうなるか。凄くない人は、月5万円しか貰えない。これでは「凄くない人」は業界内で食えない。業界外で、自分の懐から持ち出しで切磋琢磨しなければならなくなる。当然そこにフルコミットしようって奴は減ってしまう。

困ったことに、どちらの場合でも「凄い人」は困っていない。どころか凄い人が「自分はいくら貰えればいいか」という考えを押し進めた場合、「自分は好きなように働いている」、すなわち「自分は自分をきちんとコントロールしている」という自律由来自尊心は高くなるわ、「凄くない人」を干すことでライバルは減るわで実は凄い人にとってはいいことずくめだったりする。

モノの値段を決めるのは、心理的にはしごく難しい。フリーでやればわかるけど、仕事そのものよりも見積書にいくらって書くかの方がずっとストレスフル。だから、つい「自分でもとをとれればいいや」と思ってしまう。

だけど、それは「凄くなるかも知れないまだ凄くない人々」を、笑って東尋坊から突き落とすのと同じことなんだよね。もし彼らにも凄くなるチャンスを与えたかったら、「自分はいくら取れれば満足するか」ではなくて、「客はいくらまでなら満足して出すか」という観点で値付けしないとだめなんだ。

非常に残念ながら、IT業界の凄い人で、そこまで考えを巡らせる人というのは少ない。むしろ凄い人ほど無頓着というか、そういうマンドクサイことを忌み嫌う。

これだけ高度で、かつ(きっちりやれば!)これほど客が喜んでお金を出してくれる分野は少ないのに、これほど「中の人々」がつつましい世界は少ない理由が、そこにある。実はIT業界だけではなくて、「クリエイティブ」と呼ばれる世界に共通した課題で、凄くない人が赤貧洗うがごとしというのは共通だけれども、それでも漫画家や作家なら、「凄い人」は報酬だって凄い。でもIT業界で、ストックオプションのような、貰った側の責任で現金化するという形ではなく、「凄さ」をそのまま現金としてもらっている人が、特に日本にどれくらいいるのだろう。

IT戦記 - 今回の CSS Nite の件について
僕は、 YAPC とか LL 魂とか凄く好きだし、有料イベントに対して批判をしてるつもりはなかったのです。僕は、「僕も CSS Nite は金取り過ぎだと僕も思う!」ということが言いたかっただけなのです。

確かに、凄い人どおしの切磋琢磨というのはめっさ楽しいし、こういうものは手弁当でも参加したいと私自身思うし、実際にそうしている。YAPC::Asiaに至っては、宿まで提供しているので、私個人は食費だけでも10万円前後の持ち出しになるし、「もし有料で貸したらどうよ?」という機会損失まで考えると、数十万円にはなる。いや、今の(私の住まい)の地価高騰を考えると万円単位で3桁超えちゃうかも知れない。まあ、銀座で飲むことにくらべれば、そこまで考えてもずいぶんと安い道楽なんだけどね。

そういう道楽は否定しないし、否定しないから私自身道楽者であることを愉しんでいるのだけど、しかし問題はYAPCをやっていることではなくて、それに対応する「仕事イベント」が少ないこと。

実はYAPC = Yet Another Perl Conferenceというのは、Perl Conference、後のOSCONの「裏」として始まった。OSCONはフル参加すると$1500。Matzさん曰く「スピーカーにでもならなきゃとても参加できない」。それでもみんなで集まって何かしたい、というのが、Yet Anotherの真意。

だから、合州国では、まず有料イベントがあって、そこから無料イベントが派生したという形になっている。広大な合州国では、「ただイベントに参加する」だけでも、足だの宿だの結構な金がかかる。イベントを無料してもトータルで考えると、半額ぐらいの感覚にしかならない。

ところが、日本では凄い人の大半が東京に集中していることもあって、単に集まってワイガヤやる分なら、電車賃程度ですんでしまう。それに飲み会を加えたってたかが知れている。凄い人々にとって、だからイベントを凄いことと感じるのはなかなか難しい。

それでも、凄い人なら覚えておいてほしい。地方のまだ凄くない人々が、凄い人である君をどう見ているのかを。スターなんだよ、君は。君の生ツラを拝むだけで彼らの心拍数が倍増するほどの。

IT戦記 - 今回の CSS Nite の件について
お前がかっこいいと思ってる人間よりも、もっとかっこいい人間が僕の周りにはいっぱいいるんだよ!
僕はかっこいい人間に囲まれて JavaScript を書いているんだよ!それをバカにするな!

そろそろ気づきなさいよ。

自分のその「かっこいい人間」の一員だってことに。

そして、「かっこいい人間」だからこそ、そうでない人が「喜んでお金を出します」って言ったときにそれを受け取らなきゃ駄目だってことに。

それが、「かっこいい人間」の義務じゃない?権利じゃないよ。義務だよ。

それにしても、やっぱ考えちゃうよなあ。「まるごとJavaScript & Ajax! Vol.1」の原稿料より、アフィリエイト代の方が多くなっちゃたってことに。私の担当分のページ数が少ないってこともあるし、この手のムックとしては重版がかかるほど売れてくれたってこともあるのだけど、やっぱ素直に喜べない....

Dan the Public Figure