献本御礼。
実にユニークな一冊。
本書「オタクで女の子な国のモノづくり」は、「オタクで女の子」な、もはやサブとは言えない日本のサブカルチャーが、産業にどのような好影響をもたらすかをこれでもかこれでもかと書き連ねた本。「オタクで女の子」なさまを書いた本はそれこそ五万とあるし、「モノづくり」に関して書いた本もまた五万とあるけれども、この両者を結びつけた本は意外と少ない。
それにしても、ローゼン麻生にオビを書かせた上、私にまで書評依頼をするとは、講談社BIZ編集部もなかなかヒンヨクである(笑)。ちなみにヒンヨクというのは、我が妹による「貪欲」の読みである。以来「宅」ではオタクで女の子なgreedのことをこう読んでいる(ほんと)。
日本製品のオタク性・10の法則 - BOOK倶楽部より- 擬人化が大好き
- 個人カスタマイズを志向する
- 人を病みつきにさせる
- 寸止めを狙う
- かすがいの働きをする
- 「恥ずかしさ」への対策になる
- 健康長寿を追求する
- 生活の劇場化を目指す
- 地球環境を思いやる
- ダウンサイジングを図る
本書のメインテーマである、「幼児的かつ女性的な日本文化は、日本の弱点ではなく利点である」という主張は、本書がはじめてというわけでは実はない。有名どころでは日下公人がこの主張をかなり前から続けている。しかし、このテーマだけでまるまる一冊書いてしまったのは本書ぐらいではないだろうか。
本書は、「オタクで女の子」なさまを、徹底的に褒めている。しかし、ここまで褒めるともう褒め殺しの域ではないか。「オタクで女の子」な言葉で説明すると、デレばかりでツンが少なすぎる。
まず、「オタクで女の子」な様を、当の日本人も全てよしとしているわけではない。
べにぢょのらぶこーる - やっと分かったよ!ミクシィが”気持ち悪い”理由!!答えは、”女社会だから。”
もっと正確に表現すると、”女の子社会だから。”
べにじょさんを「オタクで女の子」な例にするのはちょっと申し訳ない気がするけれども、「オタクで女の子」な世界で優位な立場にあるはずの人々ですら、行き過ぎ感を持つ人が少なくないというのは忘れるべきではないだろう。ましてやオヤジともなれば。
しかし、オヤジには申し訳ないが、日本だけではなく世界がますます「オタクで女の子」な世界になっていくのは避けられないと私も思う。なぜかといえば、それが世界を平和にする最も冴えたやり方だからだ。それ以外のやり方というのは、常に「世界の敵」を必要とする。まさに合州国メソッドだが、これがあちこちで破綻しているのはご存じの通り。
それでも、男の子はいつかオヤジとなり、女の子もいつかオバサンになる。残念ながら、本書にはオタクで女の子な世界におけるオヤジやオバサンの作法は書いていない。加齢臭グッズぐらいでは、どうしようもないだろう。
とはいえ、240ページ弱の本では、オヤジやオバサンの面倒までは見切れないだろう。まずは「オタクで女の子」な世界とはいったいどういう世界なのかというのを、本書で確認しておくのは、オヤジやオバサンにとっても意味があることである。
だからこそ、著者には「オタクで女の子な国のオジサンオバサン」を続編として書いてほしい。本書は"Neo Genesis of Geeky-Girly Japanese Engineering"という素敵なタイトルがついているが、それがない故にTV版のエヴァンゲリオンを見終わった時のような不満と不安を禁じ得ない。著者がこれをどう補完するか、今から楽しみである。
Dan the MAN
>避けられないと私も思う。なぜかといえば、それが世界を平和にする最も冴えたやり方だからだ。
このコメントをみて、「それは冴えたやり方ではないだろう」
とおもいましたが、この動画を見て、あながち嘘ではないと思った。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm703961