これまた献本御礼。

今年読んだ中で、最も濃くて熱い鼎談集。彼らほど、CONTENT'S FUTUREを真剣に考え抜いてきた二人を私は知らない。

それだけに、「メディア・イノベーションの衝撃」を読了した時と同じ「惜しい!」感を禁じ得なかった。

本書「CONTENT'S FUTURE」は、小寺信良津田大介が、コンテンツの今を担う9名の第一人者たちを一名づつ加えて行った鼎談集。その9名のリストは、以下のとおり。

  • 土屋 敏男(第2日本テレビ エグゼクティブ・ディレクター)
  • 草場 大輔(東京MXテレビ 報道制作局ディレクター)
  • 椎名 和夫(音楽家、実演家著作隣接権センター運営委員)
  • 遠藤 靖幸(価格.com マーケティング部)
  • 江渡 浩一郎(産業技術総合研究所 研究員)
  • 西谷 清(SONY ビデオ事業本部長)
  • 長谷川 裕(TBSラジオ「Life」プロデューサー)
  • 中村 伊知哉(国際IT財団 専務理事)
  • 松岡 正剛(編集工学研究所)

「著名人」ではなく、「第一人者」を選んだ著者たちのセンスは素晴らしい。これらの第一人者たちが、いかにコンテンツの未来を真剣に考えているかがびしばし伝わってくる。遠藤氏と松岡氏を除けばパラダイス鎖国中の業界内にあっても、外からの風をきちんと感じ取っている人ばかりだ。

これが、"CONTENT'S NOW"であれば、非の打ち所のない鼎談集となっただろう。実際、そういう読み方をお薦めする。強いて欠点を言えば、フットノートがあまりに膨大な上、フットノート自身も別のフットノートを参照しているので、きちんとした索引を用意すべきだったのにそれがないことぐらいか。

しかし、本書は"CONTENT'S FUTURE"なのである。

なぜ、ラレコと語らなかったのだ。なぜ、矢野哲と語らなかったのだ。

なぜ、未来と語らなかったのだ。

p. 305
小寺: そもそも編集って作業自体が、どういうことをするのか理解されていないんですよね。編集って、中に入って現場で一緒にやってみなきゃわからない「影の職業」なのに、制作上はキーになる役目だったりするんじゃないですか。

ニコニコ動画のMAD見てしまったら、この台詞はありえない。

そうなのだ。すでに未来の芽はあるのだ。あっちにもこっちにも

もちろん、未来を考えるにあたって、今を知っておくことはものすごく重要だ。しかし、未来は考えるものではなく、創るものである。そして創っている本人たちがそれを言語化するだけの語彙を持っていることは滅多にない。彼らの言葉にならない言葉を拾うことこそ、著者たちがやるべきことではなかったか。

著者たちは未来がどっちを向いている、いやどちらを向くべきかは正しく見据えている。

p. 306
だから僕は、「クリエイティビティは模倣から始まる」って論は捨ててないんだよね。

だからこそ、未来を創る手は双葉でなければならない。著者たちを含めて本書で語る人々は栴檀ではあるけれども、すでに何らかの地位を得た「中年」である。年齢は関係ない。

とはいえ、中年にも中年の役割がある。過去と未来をきちんとつなぐという役割が。その役割であれば、本書はきちんと果たしている。願わくば本書は「上年」と「下年」の双方に読んで欲しい。「上年」は、なぜ自分たちで手を下しては駄目かを知るために。「下年」は、なぜ自分たちの手が縛られているかを知るために。

本書を読んで改めて梅田望夫のサバイバビリティに思いを馳せた。彼は未来を作るのは自分ではないこと、しかしそれがどんな未来であれ、絶対に支持することを早々と表明している。無謀でナイーブに見えて、実はそれが一番強かなのだから。

Dan the Middle-Aged