新潮新書編集部より思いがけないバースデープレゼント。
私がこれまで読んだ中で最も面白いダイエット本にして、岡田斗司夫作品の中ではもっとも「使える」本。
本書「いつまでもデブと思うなよ」は、自他ともに認めるオタキングであったはずの著者が、実は知らない人にとってはそれ以前に「デブ」であることを知ってしまい、そこで一念発起して117kgだった体重を67kgまで落とした動機と顛末を一冊にまとめたもの。
目次 - 新潮社より- 序章 一年で五〇キロやせたよ
- 成功するダイエットは楽しい。精神力も我慢もいらない最高の娯楽である。
- 第一章 「見た目主義社会」の到来
- 学歴主義社会は終焉した。見た目重視の現代社会で確実に損をする存在が「デブ」なのだ。
- 第二章 ダイエット手段の格付け
- MBAや英会話にあくせくするくらいならば、まずやせるべきだ。それも楽しく効率よく。
- 第三章 助走・太る理由
- デブの正体。それはカロリーという名の不良債権を増やし続ける多重債務者である。
- 第四章 離陸・カロリーを計算してみる
- 好物イコール高カロリー。ネットを駆使して判明したのは冷徹な事実であった。
- 第五章 上昇・カロリーを制御する
- ついに浮上開始。一週間に一キロの驚異のペースで私は軽くなっていった。
- 第六章 巡航・いろいろやってみる
- 太ろうとする我が体との騙し合い、駆け引きが始まる。勝つのはどっちだ。
- 第七章 再加速・体の声を聞く
- 欲望型から欲求型へ。体が本当に欲するものが何かが見えてきた。
- 第八章 軌道到達・ダイエットの終わり
- 〇・五%の狭き門を突破。自己コントロールできる方法を手に入れた。
- 終章 月面着陸・ダイエットは究極の投資である
どちらが傑作かといえば、やはり私としては〈世界征服」は可能か?〉を挙げるが、しかし、どちらがより多くの読者にとって「今、そこにある危機」かといえば、世界征服ではなく自分の贅肉征服であることは言うまでもない。
レコーディング・ダイエットのススメ: スタイル&顔の遍歴ちなみに、この本と合わせて2冊買うと1500円をオーバーするので、amazonで送料無料になりますよ(笑)
まだどちらも持っていない人は、両方一緒に読むとさらにその効用が高まるだろう。世界と自分。どちらも征服の対象なのだから。
世界征服に興味をほとんど示さなかった我が妻も、某ブートキャンプであればよろこんでDVDを買ってしまうのである。この顔をみてもなぜダイエットが必要なのか旦那の私にはよくわからないのだが、世界征服よりも贅肉征服の方が先進国の男女にとっては切実な問題であることは、見た目無頓着な私にもわかる。
それゆえ本書は単なるダイエット本としても有用で、特に本書で紹介するレコーディング・ダイエットは、最小の手間で最大の効果という点ではおそらく至上最強でもある。その手法がどんなであるかは本書を呼んでもらうとして、その「楽ちんさ」は、右の「自転車で痩せた人」の対局にある。同書ではダイエットツールは自転車、それも単なる自転車ではなくロードレーサーをきちんとしつらえ、それを一日60km以上転がすという、jkondoでもなければそうそうついていけない、しかしそれだけに面白い一冊であったが、本書の手法であれば、メモを付ける能力がある人であれば誰でも実践できるのだ。
しかし、レコーディング・ダイエットそのものは本書の専売特許ではないし、それを紹介した番組や本はかなりの数に及ぶ。にも関わらず本書が最も面白いダイエット本なのは、本書がダイエットのHowにとどまらず、ダイエットのWhyにまで言及している点にある。
なぜ、岡田斗司夫はダイエットを究するようになったのか。
見た目によって周囲の反応が変わったことを発見したからである。なんとなく健康のためダイエットしているうちに、周囲の態度の変化に気がつき、それはどういうことだ?ということを追求した結果が、本書なのだ。
その結果、著者はダイエットを超えた、肉体ハックを手にする。その方法がGTDと全く同じだというのが面白い。とにかく記録を付ける。それだけで、体は勝手に節制をはじめる。
実は私も、かつて同様のことをしていた時期があったし、ここ10年は著者の言う第七章の段階にかなり前から入っている。私の体重は、一年に10kg近く変動するが、それは私がかくありたいという範囲に入っている。ちなみに今の身長になってからのminは50kg未満、maxは95kgで、最も筋肉があったのがmaxの頃で、その頃は250lbをひょいひょいベンチブレスしていた。ただし、その頃に肉体というのは結構簡単に改造できるのだという感触を得てしまった反動か、ダイエットを真剣に取り上げる気も失せてしまった。方法はわかったので気が向いたらやるが、今はそっちに気がまわらない。今でも胴回りより胸回りの方が太いし、階段も一つ飛ばしで上るし、瞬発力はそれほど落ちていない。ある瞬間の自分の体重も、0.5kg精度でわかる。体が重くなれば食が細くなるし、軽くなれば太くなる。病的に痩せていた頃の痛い記憶があるので、今以上太くもなりたくないが細くもなりたくないといったところである。ただ、ここ数年免疫力が落ちている実感はあるので、やはり運動不足はそろそろなんとかしようかといったところである。余談であるが、私がサスペンダーを愛用しているのは、体重の周期変動が大きいということもある。一番重い状態にあわせると、どうしてもそれ以外の時はぶかぶかなのだ。
おそらく、著者と私の一番の相違点は、以下である。
P.49デブの方が得する職業など、ほとんどない。
確かに現在ではデブの市場価値は底値と言ってもよい。それは自己管理能力の欠如の証拠であり、自律心の弱さの発露であるとすら見られてしまう。しかし、それはこういうのも何だが一般人、というより「キャラの弱い人」の場合であり、むしろ強烈なキャラの持ち主は少しデブっていた方がそれが「貫禄」になったりする。失礼ながら小松左京はデブだった頃の方がかわいくてかっこよかったし、オタキングも現在より92kgの写真の方がキングらしい。「暫定形態」に至っては、人間宣言にもほどがありすぐるといったところである。
とはいえ、本書の手法は痩せる方法に留まらない、自らが望むボディを手に入れる方法である。ここまで来れば、どういう風に持っていくかというのは自分次第といったところである。その意味では、ダイエットというのは肉体から自由を勝ち取るということなのだろう。
しかし、うまく行っても行かなくても、ダイエットがもたらす効果は、自分は気に入っても自分の気に入った人たちが気に入ってくれるとは限らない。そのあたりのさじ加減は、ダイエット以上に難しいのかも知れない。
少なくとも、私は現在の肉体に満足とはいえないまでも不満はない。内面的には扁桃炎がなかなかなおらないだとか、肩こりがちっともよくならないだとかいろいろあるが、特に外見には、ない。
少なくとも、こういう似顔絵を描いてもらううちは、デブぎみのままでいいやというのが心境である。
それでも、いつかは私も体重を今より一段と落とさねばならない日が来ることはわかっている。それがいつかは、体が教えてくれるだろう。その時に、あらためて本書をひも解くことにしよう。その意味でも、ヴィンテージワインを頂いたようなうれしいバースデープレゼントであった。献本して下さった方はそこまで意識はしていらっしゃらないだろうけど。
Dan the Lazy, Impatient, and Hubristic Body Hacker


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