FXは、現在ある金融商品の中で、もっとも多くの人の希望にそう商品だと思う。
ただ一点を除いて。
FX(外国為替証拠金取引)が何たるかは、ここでは説明しない。よく知りたい方は、Amazonで"FX"で検索すれば参考書がたくさん出てくる。ここでは出版社の方に頂いた「山根亜希子のFXで儲ける超投資術」を取り上げるにとどめるが、これらの参考書を読めば、いかにFXが優れた金融商品であるか、というより、いかにストレートな外貨預金がばかばかしいかがよくわかる。
まず第一に、普通の人がなんらかの形で外貨投資をしたい場合、もっともスプレッド=売買価格差が小さいのがFXだということ。現金なら4円、トラベラーズチェックなら2円、通常の外貨預金なら1円程度が、FXなら数十銭のオーダーだということ。これだけでも、外貨預金に勝る。
しかしFXならでは醍醐味は、なんといってもリスクを自在に調節可能なことにある。「10万円で100万円分の投資を」というのは確かに事実だが、別に10倍である必要はない。この部分は、いわゆるLC幅を変えれば自在に調節できる。LC幅を小さくすればよりハイリスク、ハイリターンになるし、LC幅を大きくすればその逆になる。理論的にはLC幅=指値にすれば外貨預金と事実上同じになるが、実際のところLC幅は0.5-30円/外貨程度のところが多いようだ。
このLCは、Loss Cutの略で、このレベル以下に外貨が下がったら、自動的に反対取引がなされて清算される。これを自動でやるところもFXのいいところで、担保不足による追証がそのおかげで発生しにくいのだ。もちろん、LCが発生した場合には投資分がなくなることになるが、それでも0以下にならないのだから気はずっと楽である。
ここまでは、株の信用取引をネットでやった場合でもほぼ同じだが、一つ決定的な違いがある。
Business Media 誠:保田隆明の時事日想: なぜ大損をするのか??ライブドアショックと荒れる円相場から個人投資家が学ぶべきこと振り返ってみれば、2004年、2005年は株式投資ブームであった。しかし、ライブドアショック以降の冴えない新興市場に見切りをつけた個人投資家は、2006年以降に外為取引を主戦場とするようになった。
なぜ保田さんがこのことをほぼスルーしていないのかわからないのだが、FXの方には利子がつくのである。それも、証拠金だけではなく建玉に対して。これをスワップポイントと呼ぶが、当然これもレバレッジ(a.k.a ギアリングレシオ)が大きければ大きいほど大きくなる。
さらに指摘しておけば、外貨のボラティリティというのは、株に比べれば圧倒的に低い。FXでレバーをかけて、やっと株の現物とどっこいといったところ。そのことを考えれば、FXの参加層は株の参加層よりも幅が広そうで、それ故投資に関してより保守的な人が多そうだという予測もなりたつ。新興市場とFXを重ねるのは、定性的にはアリだと思うけど、定量的にはこじつけに聞こえる。
24時間取引可能、5万円程度から参加でき、リスクは好みのままに調節可能でその上利子も付く。まさに夢の金融商品といった感があるFXなのだが、外貨預金をこれでおきかえるには、一つ重大な欠点がある。いや、厳密には日本のFX、なのだが。
それは、FXに関する税制である。雑所得扱いなので、あとできちんと税金を申告しておさめなければならない。しかも所得税なので、税率は額によって変わるのだ。それをちょろまかそうとすると、当然こうなる。
livedoor ニュース - [FX脱税]主婦に罰金3400万円 東京地裁判決外国為替証拠金取引(FX)などで得た所得約4億700万円を隠し、所得税約1億3900万円を脱税したとして、所得税法違反に問われた東京都世田谷区の主婦、池辺雪子被告(60)に対し、東京地裁は24日、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金3400万円(求刑・懲役1年6月、罰金4200万円)を言い渡した。佐藤卓生裁判官は「脱税額は多く悪質。納税意識が極めて低い」と述べた。
これが外貨預金なら、利息の20%が源泉徴収されて、それでおしまい(厳密には解約時に為替差益が出たら確定申告が必要だが、ここでは利息を受け取ることだけを考える。さらに外貨MMFなら、為替差益も非課税)。この違いは大きい。私は別にこの主婦を弁護するつもりはないが、それでもいくら税金を払わなければならないのか、取引の最中にはわからないというのは結構な不安だ。
だから、今の税制では、ちょっとした小遣い稼ぎになっても、元本はそのままにしておき利息で自分年金を捻出するといったような目的にはとても使えない。そして、このことをきちんと指南したFX本は、上の「超投資術」を含めほぼ皆無なのだ。「FXの収益は雑所得扱い」の一行が、それこそ「健康のため吸い過ぎに注意して下さい」という一昔前のタバコの注意書き程度にあって、それでおしまい。本来なら、きちんと一章を割いて説明すべき重要な注意点なのだが。
ところが、普通に円を借り、それで普通に外貨預金するのは、利息の20%が源泉徴収されておしまい、なのである。多くの銀行が富裕層に提供しているサービスの一つがこれ。違うのは最低投資額だけで、全体の仕組みはFXと実はなんら変わらないのに。
この税制って、隠れた逆差別ではないのか。FXもスワップポイントを源泉徴収しておしまい、ということにしたら、富裕層でなくても外貨預金/MMFなみに安定的な運用にも使えるのに。
Dan the Investor
追記:名無しさん@お金いっぱいのコメントどおり、確かにくりっく365を使うと20%源泉徴収で、同書でも巻末で紹介されているので追記しておきました。しかしくりっく365は、上場しているから扱いが株などと同じで、不動産に例えれば現物とREITの違いといったところでしょうか。
同じ仕組みの金融商品なのに税率が違うというのは、やはり納得いきがたいところで、混乱に拍車をかけているようにしか思えません。そうそう。不動産は不動産でさらに税制がややこしい。いっそストックに分類できるものからあがる収益は、税率一律にすればいいのに。

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