著者より献本。早速読了。
本書「究極の会議」は、鈴木健による会議論。鈴木健がどんな人なのかご存じない方は、こちらを参照。
究極の会議 発売記念サイト-- キャンペーンページ --国際大学GLOCOM主任研究員 株式会社サルガッソー 代表取締役 ビジネスからアカデミックな分野まで幅広い活動を展開し、現在注目を集めている。 電子貨幣PICSYなどの研究を行い、高い評価を得る一方で、株式会社サルガッソーでは、 コラボレーション用のソフトウェアの開発と普及の活動を行っている。 共著書に「NAM生成」(太田出版)、「進化経済のフロンティア」(日本評論社)がある
一言でまとめると、好きを貫いて生きている人の一人だ。そんな著者が嫌いなのが、会議。その会議を、いかに効率よく進めるかというのが本書のアジェンダだ。これが役に立たないはずがない。
目次それでは著者が言うところの究極の会議とは何か?それは早くも3ページ目で明らかになる。
P. 3たった一つなので、薄い本になった。たった一つなので、どんなコツなのか、もう言ってしまっていいだろう。「会議はその場で議事録を作るためにある」
これはもう、会議に関して絶対の真理であり、著者は第1章でそれを説明したあと、第2章と第3章で著者謹製のツールを紹介しつつ、その手法を紹介している。ここまでであれば通常のハウツー本であり、「役に立つ」が「面白い」とは言えない。
しかし、それを見越して著者は添え状に以下を書く事を忘れない。
第四は小飼さんも楽しんでいただけると思いますので。
実は、本書で本当に面白いのはこの最終章と特別対談だ。これがある故に、本書は「会議についての何百冊目のハウツー本」ではなく、「鈴木健の一冊」になっている。その内容がどんなであるかは、各自確かめていただきたいのでここでは書かないが、ヒントだけチラリとお見せする。
p. 137ぶっちゃけ会議の生産性なんてどうでもいい
会議本でその存在を否定するようなこの発言の真意が何なのかは、繰り返しになるが各自ご確認のほどを。しかし、どうでもいいことだからこそとっとと片付けた方がよく、そしてどうすればとっとと片付くかというのが1-3章の主題なので、会議にうんざりしている人はその部分だけ読んでも十分元が取れる。元が取れるといえば、本書はきわめていさぎよい体裁をしている。160ページで税込み1260円。無理に増量して1500円にしなかったところも好感が持てるが、第4章を膨らませて1500円にしてもよかったのに、とも思う。
それでもなお、本書の会議に関する考察は、半分だなあ、と思わざるを得ない。それは、会議の真理である「会議はその場で議事録を作るためにある」から自然と導きだされる結論でもある。
「議事録を作る」というのは、言い換えれば「言質を取る」ことでもある。効率的な会議というのは、故にどれだけ低コストで言質を取るか、と言い換えることも出来る。問題はこの言質という奴で、これを取るのが参加者にとっていい会議ばかりではないのだ。
具体的には、敵と会議する場合。この場合、相手の言質を取るばかりではなく、自分たちの言質を取られないというのも会議の「目的」になる。味方通しの会議であれば、本書を含め会議の効率=仕事の効率ともなるが、世間にはそういう会議ばかりではなく、そして「踊る会議」の多くは、言質を取られまいという双方の応酬により、踊るべくして踊ったということが多い。そして時には、会議が踊っていた方がまし、というものもあるのだ。それで戦争になるよりは。中東問題なんて、その典型である。
実のところ、私が知りたい会議の究極は、そういう会議をどう位置づけ、どう裁くかなのだ。その点においては、残念ながら本書が扱う会議も「味方通し」の会議で、そして日本の会議本はそれを暗黙の前提にしてしまっている。実は会議をどう先延ばしするか、どう論点をぼかすかすか、そしてどう言質を取られぬようにするかというのも、後ろ向きではあるが実に有用で役立つ技術なのだから。
とはいえ、会議の過半は、敵との会談ではなく味方どおしの打ち合わせ。せめてそれくらいてきぱき片付けねば、とても敵との会談はおぼつかないというのも事実。その意味で、本書はゴールではなく、21世紀の会議におけるスタートラインなのだ。
まずはスタートラインにきちんと立とう。本書は、間違いなくその手助けになるはずだ。
Dan the Tough Negotiator
正:味方同士
(「どおし」ではなく、「どうし」ですね)
誤:どう論点をぼかすかすか、
正:どう論点をぼかすか、