あの5人が、ついに本に。
本書「今日の早川さん」は、人気blog漫画、[今日の早川さん]を漫画本にしたもの。blog本は今やちまたに溢れているが、漫画は未だに珍しい。
今日の早川さん:ハヤカワ・オンラインSF者の早川さん、ホラーマニアの帆掛さん、純文学読みの岩波さん、ラノベファンの富士見さん、レア本好きの国生さん。個性豊かな女の子たちの本と読書をめぐる楽しくも悲惨な日常のアレコレ。
私自身本好きなので、自然と彼女たちのファンとなったし、COCOさんへのお礼の意味もこめて一冊買ったのだけど、本entryは画評。だからiPhoneからPhoneを引くようにファンとしての感情を抜きにして評することにする。

まず価格。blog本として見れば決して高くないのだが、漫画本として見ると1000円というのはやはり気になる。1000円の漫画というと、「AKIRA」や「深く美しきアジア」や「サルまん」のクラス。そこまでのクォリティは望みようがないのを知りつつも、しかし安価で良質な漫画を浴びるように読んでいる私にはどうしても気になる。
しかし、ファンを当て込むというのはアニメDVDでは常道で、ファンには1000円という価格は価格のうちにはいらないだろう。私は人ごみが苦手なのでコミケには行った事がなく、そのせいか同人誌を買った事もないのだが(もらったことはある)、同人誌の価格はこれくらいが常識であることを考えれば、この価格は妥当なのかも知れない。
次に、フォント。COCOさんはフキダシも地の文も丸ゴチ系のフォント一種類でやっていらっしゃるのだけど、本書でもそれがそのまま。blogの解像度では気にならないのに、印刷するとこれがテラ気になるのはなぜだろう。実際高解像度だと、このフォントは細すぎるように思う。折角漫画として出版するのだったら、ここは写植の方がよかったのではないか。
そして、blog本としての付加価値、というよりその欠如。確かに描き下ろしのストーリが一本載っている(全国の岩波さんファン涙目:-)のだけど、折角の素材なのだし、ここは例えば本物の作家たちと早川さんたちを座談会させるとかの企画が欲しかった。プロにも早川さんたちのファンはいないのだろうか?
Horror & SF - coco's bloblog - 2007-09-07そんなわけでコンセプト的な部分では意外にスムーズに進行しましたが、商業レベルでの絵の見せ方、テキストの読ませ方等多くの部分で担当さんにはありがたいアドバイスをいただきました。
全体として、COCOさんと担当編集者の方には申し訳ないけど、早川書房はもっとプロの出版社としてCOCOさんをサポート、というより「プロデュース」して欲しかった。blogも書籍もメディアとしてほぼ同じものは載せられるけど、それぞれ特性が違う。紙としての特性を、もっと引き出して欲しかったというのが正直なところ。印刷のクォリティはむっちゃ高いのだけど、たとえ漫画であっても印刷は本の価値にしめるウェイトはそれほど高くないのだから。
一つ希望が持てるのは、「今日の早川さん」はこれで終わりではない--かも知れないこと。単なる邪推かもしれないけど、「ホラー&SF用語集」は本書では〈さ行〉までしか描かれていないのを見れば、後が続いたっておかしくない。このペースならあと2冊は出るかも知れない。本書には「第一巻」とは記されていないが、なあに、それを言えば確か「銀英伝」だって最初は「1」がなかったはず。
続刊が想定の範囲外で、本書の体裁もそれを反映していないといっても、「育ってダーリン」(もしかして黒歴史?)みたいに新装版で解決してしまうという手だってなくはないし....
これで、おしまいじゃないよね?>COCOさんに早川さん(書房的に)。
Dan the Fan Thereof
「銀英伝」も同様の理由で巻を重ねたと思います。
そういうわけで私も一冊注文しました。
あと下記のページもお勧めです。
『今日の早川さん』を10倍楽しむ方法。
http://d.hatena.ne.jp/kaien/20070906/p1