佐々木さんより献本。

これは、使える。

本書〈3時間で「専門家」になる私の方法〉は、現時点までに佐々木俊尚が書いた本の中で、最も使える本。ちなみに最も面白いのは「 フラット革命」。何が書いてあるかというと、専門家はとにかく、括弧付きの「専門家」としてその専門分野に関して本を一冊できるだけの情報収集と分析をどうやって著者が実現しているか。

目次
まえがき
  • 第1章 激変した「情報をめぐる環境」
  • 第2章 新聞記者は無意識に「マトリックス」を描く
  • 第3章 クオリアを身につけよう
  • 第4章 実践・3時間で専門家になる part1
  • 第5章 実践・3時間で専門家になる part2
  • 第6章 ニューロン型情報収集のノウハウ
  • 第7章 セレンディピティを実現する
あとがき

著者は新聞記者としての訓練を受けた後、Web黎明期に業界紙で活躍した後、Web2.0の時代にフリーランスジャーナリストとなった、「あちら側」にも「こちら側」にも通じる視点と言葉を持ったジャーナリスト。その手口公開ともなれば、あちら側の住民にもこちら側の住民にも多いに参考になる。

実際、「3時間で『専門家』」になるニーズというのは、ジャーナリストの特権ではない。投資判断から夕食の話題まで、現代はオンの時もオフの時もこれが求められる時代と言ってもいい。

括弧抜きの専門家になるのには、どんな分野でも3年、専門性が高ければ下手すると30年かかるかも知れないが、「専門家」であればWebを駆使すれば3時間でいいと著者は言う。実際それを第4章と5章で実践するのだが、この部分というのは圧巻で、ここを飛ばして読めば、「佐々木俊尚というのは葬式評論家なのか」と誤解してしまうほどだ。

もちろん、「専門家」と専門家の間には大きな壁があるし、専門家が見れば「専門家」はすぐにバレるものでもあるし、「専門家」による心ない発言が専門家の足を引っ張ることもしばしばである(例えば産科をめぐる状況)。しかし、著者はきちんとそれを峻別した上で、「私の方法」とタイトルに付ける事で両者が異なることを明示している。この「私の」というのは括弧付きの「専門家」モードで話をするときには必須だと思うのだが、これを省いている書き手はあまりに多い。この良心がある限り、佐々木さんの著書は安心して薦められる。

版型も面白い。縦がA5の高さなのだが、縦横比が新書と同じく√2:1ではなく黄金比に近い。最初「なんぞこれ」と思ったのだが以外に手になじむ。2丁拳銃読みにも耐える。今後流行るかも知れない。

話を内容に戻すと、実際、「専門家」で足りる状況というのは以外と多いのだ。数十万円の投資のために本当の専門家を呼んだらそれだけで元本が吹っ飛ぶ。数十万の訴訟も同様。実際のところ、市井のほとんどの人は、一大事でもないと括弧抜きの専門家は使えない。自ら「専門家」となって埒を開けるしかないのだ。

そして幸いにも、ネットがそれを可能にした。格差社会とはいうけれど、少なくともgoogleや2chを使うのに自らの所属する階層は関係ない。

♪時代が病んでも
♪人生なんて自分次第
-- 強引 ni マイ Yeah〜

3時間「専門家」で勝てる場面はまだまだいくらでもある。「〜したら負けだと思う」前に一読あれ。

Dan the Instant "Specialist"