本書は、ライトノベルです。

嘘だけど。

本書「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」の主人公「みーくん」とヒロイン「まーちゃん」は、こんな人々。

P. 27
彼女は、単なる同級生ではない。
一緒に嬲られ。
一緒に壊され。
一緒に狂った。
そんな、望まない関係。
僕と御薗マユは、八年前の誘拐事件の被害者だった。

本書はそのみーくんが、まーちゃんこと御薗マユが幼兄妹誘拐事件の犯人であることをつきとめるところから話がはじまる。

PP. 31-32
「君、あの子たちを拉致っちゃった?」
「うん!」
 当たり前のように、元気一杯の返事をちょうだいした。なんか、褒めて褒めてと、今にも言い出しそうだ。
かさぶた。 嘘つきとヤンデレの恋愛(?) 『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 幸せの背景は不幸』
しかし本作品の最大の特徴は、壊れたまーちゃんの壊れっぷり。尋常ではない。

嘘だけど。

主人公とまーちゃんのどちらが深く嬲られて壊されて狂ったかを比べることに意味はないけれど、私には壊れたままの自分を、主人公にありのまま××してもらうまーちゃんがうらやましくて仕方なかった。もう直らないのはまーちゃんもみーくんも同じだけど、主人公であるみーくんは、壊れたままでいることすら許されないのだ。

だから、みーくんは嘘をつく。それしか生きて行く方法がないから。それしかまーちゃんを救う方法がないから。だから、嘘が通用しない場面では、こうなるしかない。

P. 164
「ばーか」
 その通りだ。
「嘘つき」
 その通りだ。
「死んじゃえ」


 その通りだ。

いやいや、「いい最終回だった」は早い。みーくんの受難はこのあともきちんと続くのでご安心あれ。こういうのもなんだけど、私はまーちゃんによる拉致が明らかになった時点で、本書がどういう結末を迎えるのかわかった。それは私の推理力が優れているからではなく、本書のプロットが単純だということなのだろう。しかし、その間に上のエピソードが入ることは予想外で、それが本書を「ただの痛い話」から、「身につまされるような痛い話」にしている。

P. 185
「御薗がもう一度入院して、改竄した記憶と献上からほど遠い精神を立て直しても、不幸な過去を取り戻すだけ。それと向き合って目を逸らさずに幸せをもう一度見つけてくださいなんて、上から物事を見ている人間の言い草。耐えきれずに自殺を図る奴だっているんだから。真実から目を背けるな、なんて傲慢な人間の押しつけに過ぎない。アタシは認めないね」

主人公の主治医のこの敗北宣言に、返す言葉がある人がいるのだろうか。

いつも感想中 - 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 幸せの背景は不幸
でもR−18に指定したい。というかこれを楽しめるの子供は何か間違っているような気すらする。

これは、本当というより、R-18はあまり関係ないと思う。私はR-18どころかその倍以上生きているけど、重ねた年齢は鎮痛剤としては少しも役に立たなかった。心を壊されたことがある者にとっては、本書はあまりに痛い。DV被害などの心当たりがある人は要注意。少なくとも、平日に読むのは控えた方がいい。金曜日に読み始めて、土日は使い物にならない覚悟をしておけと言っておこう。

とはいえ、本書は壊れた人物たちが織りなす痛いだけのお話ではない。きちんとハッピーエンドになっている。少なくとも Nice Boat にはなっていない。ちょっとご都合主義が入っているかも知れないけど、それは読者も切実に欲している嘘なのかも知れない。

幸せに嘘も本当もないのだから。

Dan the Happy Reader