すっかり書評が遅くなってしまったのも、待ち時間が長いAmazonのせいにしとくか。

私は2週間待たされた。そして、それだけの価値がある一冊だった。

本書「非線形科学」は、文字通り、「線形」に「非ず」に振る舞う諸現象を科学で扱うことにかけて説いた一般書。フラクタル、カオス、そしてネットワーク....この広大な分野は、その小さな枝一本を取り上げても新書一冊分の分量があるほど豊穣な領域であるが、それだけに、一冊で紹介するには相当な力量がいる。著者は、まさにそれをやってのけた。しかも、新書で。

目次
まえがき
プロローグ
  • 第一章 崩壊と想像
  • 第二章 力学的自然像
  • 第三章 パターン形成
  • 第四章 リズムと動機
  • 第五章 カオスの世界
  • 第六章 ゆらぐ自然
エピローグ
参考文献
さくいん

この手の入門書としては、Gleickの"Chaos"(和訳:カオス)以来の出来だと思う。しかも"Chaos"の方は出版が1988年。原著の方はとにかく訳本は手に入りにくくなっている。しかも当時は"Making New Science"だったこの分野も、今ではむしろこちらこそ主流といえるほど幅広い分野になっていて、スケールフリーネットワークなど当時はまだ注目が集まっていない分野も本書でカヴァーされていることを考えれば、迷わず「買い」であろう。

とはいえ、本書は決して「サクサク読める」ものではない。数式は最小限に抑えてあるもののゼロではないし、理系用語もどしどし登場する。そもそも本書のタイトルである「非線形科学」にしてから、「ちょちょまwww線形もわからんのにぃ」という印象を与える。

それでいて、入門書、である。本当に非線形科学を味わいたかったら、「線形」の方も抑えなければならないし、そして実のところ世の中の現象のほとんどは非線形であることを考えたら、それを全部網羅するとなればそれだけで気が遠くなってくる。

しかし、その動機は、子供でも理解できる。「雲はなんであんな形をしているのか?」「山なみはなんでああいう形をしているのか?」....これらの疑問にまじめに答えようとすると、どうしてもぶちあたるのが、この「非線形科学」なのだから。

読み応えという点において、この一年に出た新書の中では一番。「小遣いもあまりないし、なるべく1冊で何度もおいしい一冊」といえば、真っ先に勧めたいのが本書である。

Dan the Nonlinear Being