プログラマーに限らず、(あまり好きな言葉ではないけど)知的生産において一目置かれるためには何が必要だろうか。

ユメのチカラ: プログラマの基礎体力
断片的な情報を獲得するのなら確かにインターネットや書籍でどうにかなる。しかし、職業プログラマとして一目置かれる存在になるための基礎体力ってなんだろう。

その曖昧模糊とした設問に対する答えを、最も刺さる言葉で言語化したのが、本書。

本書「翔、曰く―EXCITING 」は、哀川翔の語録。実は以前「404 Blog Not Found:セケン三題噺」でも紹介したのだが、今回改めて紹介したくなったので、独立した書評を立てることにしてみた。

目次
  • 第一章 仕事・人間関係 翔、語る - (1)マニュアルはない
  • 第二章 男気 翔、語る - (2)男気は相手が感じること
  • 第三章 恋愛・結婚 翔、語る - (3)結婚は女が決める
  • 第四章 家族 翔、語る - (4)生活リズムを合わせる
  • 第五章 教育 翔、語る - (5)挨拶が基本
  • 第六章 夢 翔、語る(6) - ニーズに向かえ
  • 第七章 EXCITING SPECIAL

本書には、その哀川翔の言葉が一ページに一言書いてある。だから、字数から行けば、一分で読もうと思えば読めてしまう。しかし、実行しようとしたら一生かかる。そんな一冊。

俳優。社長。夫、父。哀川翔は、その全てだ。

「プログラマー」も、それと同じではないか。

その意味で、「プログラマーの基礎体力」というものは存在しない。「人間としての基礎体力」なら存在する。本書には、はじめから終わりまで「人間としての基礎体力」の付け方が書いてある。

とりあえず、以下の二つは、「一目置かれるプログラマー」に限らず、私が一目置いている人は一人残らず実践している。

翔、曰く
俺たちは働きながら充電している。一年で一個でいいから、得意技を増やす。 五年で五個、十年で十個。十五年で十五個という具合に。気付けば、そうやっ て働きながら多くの技を身につけてきた。これが休まずに来た強み。だから、 あらためて充電をする必要はない
継続は力なり……。凡人が成り上がるにはこれしかないんだよね。
ユメのチカラ: プログラマの基礎体力
そこでプログラマの基礎体力をつけるためのよしおか試案である。

違う。

これでは基礎体力はつかない。逆に基礎体力がついている人であれば、このよしおか試案はいいカリキュラムだとは思う。

基礎体力というのは、人がお膳立てしたカリキュラムを、そこにあるから、もう時間だからという理由で受けることではない。きちんと「頭が」空いて、きちんと「知恵を食べる」ことなのだ。

よしおか食堂のメニューは実にうまそうだ。しかしその前にきちんと「頭が」空かなきゃ食えない。

基礎体力をつけるというのは、だからきちんと代謝すること。入れるものを入れて出すものを出す。結局のところこれしかないし、これを繰り返している人とそうでない人の差は年々広がって行くのだ。

哀川翔の言葉は、基礎代謝がきちんとしている人には実に重く、しかし自分で受け止められる程度には優しく聞こえるはずだ。逆に、基礎代謝が壊れている人には、偽善者のきれいごとにしか聞こえないだろう。

はっきり言おう。本書が偽善者のきれいごとにしか見えない人は、プログラマーに限らず知的生産業につくのはやめておいた方がいいと。知的生産の現場というのは、実のところ「知性的」というより「野性的」。「知性的」ということであればルーティンが成立したブルーカラーの仕事の方がよっぽどそのイメージに近いのだから。

その意味で、「ブロギング」というのは、実にいい基礎代謝トレーニングだ。読み続けなければ書き続けることはできない。そして書けば書くほど読みたくなる。この爽快感があるからこそ、三日坊主の私が三年にもわたって本blogを更新続けることが出来た。

というわけで、本entryは以下の言葉で締めくくることにする。引用元としても実に使える一冊だ。

翔、曰く
考えているだけじゃいけない。 やっぱり形にしていかないと。 俺はとにかく言ってみる。

Dan the (Programmer|Entrepreneur|Husband|Man)