本が好き!(β)」経由で献本御礼。

ちょちょwwwなにこの面白さ。俺の目も節穴だあぁ。こんな面白い本を年初から放置してたなんて。

税込み1575円のAmazonプライスで一冊から送料無料。面白くなかったら私が買い取ります。

もっとも、著者自身がこう言っているのもお忘れなく(^_-)

P. 16
学者世界では、自然界の擬態現象を擬人的に語るのはご法度との認識があるが、これほど多くの戦略があるのかと、驚き楽しんでもらえばよい。本書自体が読者の皆さんをだまそうと思っていただければ幸いだ[Bタグは引用者]。

本書「似せてだます 擬態の不思議な世界」は、擬態の鉄人による、擬態づくしの一冊。誰でも見たことがあるハナカマキリのような例から、分子擬態まで、似せてだますものは著者の筆の進むまま縦横無尽に登場する。もちろん人間もその例外ではない。

目次 - KAGAKUDOJIN BOOKSELLより
プロローグ -- 擬態とは何か
第1章 だまし・だまされる生きものたち
一 強いキャラクターにあこがれる -- ベイツ型擬態
二 みんなで似ればこわくない? -- ミューラー型擬態
三 目立ちたい? 目立ちたくない? -- 標識型擬態と隠蔽型擬態
四 だまして食べてやろう -- ペッカム型擬態(攻撃型擬態)
第2章 だましのテクニック -- 標識型擬態と隠蔽型擬態
一 なぜ目玉に似せるのか? -- 標識型擬態 その1
二 道路標識にご注意!? -- 標識型擬態 その2
三 気持ち悪いシグナル -- 標識型擬態 その3
四 植物になりたがる昆虫 -- 隠蔽型擬態
第3章 紋様をつくりだすしくみ -- 擬態の分子メカニズム
一 豹柄の模様をつくるしくみ -- 数理生物学的アプローチ
二 チョウの翅に紋様をつくるしくみ -- 分子生物学からのアプローチ
三 紋様に色をつけるしくみ -- 生化学からのアプローチ
第4章 擬態するカイコ
一 カイコのカムフラージュ術
二 遺伝子から見るカイコの擬態
第5章 アゲハに見る擬態の不思議
一 尾状突起
二 シロオビアゲハの複雑な戦略
三 蛹のカムフラージュ
四 鳥の糞から緑の葉へ -- 幼虫の華麗なる変身
五 幼虫の紋様のつくられ方
第6章 だまされるものか -- 擬態を見破る苦労
一 視覚を駆使して見破る
二 学習して見破る
第7章 視覚以外の五感でだます
一 五感を利用しただましのテクニック
二 音を模倣する -- ものまねをするインコ
三 匂いの擬態 -- ラフレシアの匂いは魅力的?
第8章 分子も擬態する -- 相互作用を真似る世界
一 人体に侵入するウイルスの擬態
二 擬態するタンパク質
エピローグ -- 人間社会におけるだましのテクニック
参考文献
あとがき

第一章と第二章で紹介されるさまざまな擬態の実例は実に楽しく、動物ファン、特に昆虫ファンには堪えられないのだが、その一方でこうした例は文字通り「絵になる」こともあって、TVの人気コンテンツでもある。スレた人なら「もうそれ見たし」と言うかもしれない。

しかし、第三章からがすごい。「それではこれらの生物は、どうやってその擬態を実装しているか」が徐々に明かされていくのである。まさかアラン・チューリングの名前をここで見るとは。しかも非線形偏微分方程式付きで!(数式アレルギーな方もご安心を。本書に登場する数式はこれだけです)。

擬態の基礎となる、擬態者の体表の模様の仕組みが少しずつ明らかになっていく有様は、もじどおり蝶・サイコー 。まさかノンフィクションでこの言葉を使うとは。

それにしても、擬態の研究者だけあって、この著者の不意打ちのテクニックはほんとすごい。本書の冒頭からして、オレオレ詐欺の話。カイコの話を遠野物語からはじめるのもそうだし、先ほどのチューリングの話もそう。著者の講義はさぞ楽しいのだろう。思わず東大に入りたくなっちゃったじゃないか。嘘だけど。

本書は正真正銘の生物学、それも分子生物学的を駆使して行動生態学を研究するという最先端科学なのだけど、日日の生活で使える知見の宝庫であり、また著者の「誰でも知っている」ことから「研究者ついこないだ見つけたこと」へのつなぎの匠さもあって、日本語が読めれば誰でも楽しめる一冊となっている。

それにつけても、この文章のうまさ。「生物と無生物のあいだ」も素晴らしかったけど、あちらが「科学者本」なのに対しこちらが「生物学本」で、見事な棲み分け。

p 198.
情報が複雑化する現代社会においては、自然界に存在しない新手の擬態戦略が次つぎと登場するだろう。私は瞬間の判断を避け、情報の質を常に吟味するようにしないと、いつ何時「人間界のハナカマキリ」の餌食になってしまってもおかしくない。

ああ最後までうまいことシメてくれちゃって。読了した時拍手しちゃいましたよ。電車のなかなのに。まわりの方御免なさい。

みなさんも、この知的興奮を是非。ふがふっふ。

Dan the Blogger in Disguise



似せてだます擬態の不思議な世界
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