以下に対し、岡田斗司夫ご本人による声明が出た。

404 Blog Not Found:いつまでもケチと思われるなよ
いつまでもデブと思うなよ」がちょっとした炎上話題になっている。
レコーディング・ダイエットのススメ: 賢明なブログ読者の皆様へ
以下の文章は「ノーカットで」という条件で引用・転載自由とします。

これに関して、徳保さんはこう述べている。

「岡田斗司夫×いいめもダイエット」問題 その後
岡田斗司夫さんはパブリシティ権という言葉を思いつかなかったので、苦し紛れに誤って著作権侵害といってしまった、というだけのこと。

この「パブリシティ権」、聞き慣れない言葉であるが、こういうことのようである。

パブリシティ権 - Wikipedia
平成14年9月12日東京高等裁判所判決は、「氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利」を「パブリシティ権」と呼ぶことは可能とした。そして、それがもともと人格権に根ざすものであり、したがっていわゆる物のパブリシティ権は認められないことを判示した。また、一般人と著名人はパブリシティ権の範囲が異なること等も示した。

だとすると、人格権を構成する一部分のそのまた別名であるところのパブリシティ権は、岡田さんという「人」にはあってもレコーディング・ダイエットそのものという「物」にはないことになる。私も「いいめも」の落ち度は前者のパブリシティ権の侵害、すなわち岡田さんの名前を勝手に持ち出したことであって、レコーディングダイエットそのものを曲解したことではないと考えている。

ところが、岡田さんの声明は、むしろ後者、すなわち「いいめも」はレコーディングダイエットを誤解させることに問題があると言っている(記事末に全文掲載)。

しかし、レコーディングダイエットにそのものに対する権利を著作権であれパブリシティ権であれ岡田さんが持たないのと同様に、レコーディングダイエットの誤解や失敗に対する責任も、それはあくまで読者の側にあるのであり岡田さんにはない。

「もし、ちゃんと本を読んで正しい順番ですすめていれば痩せられた人が、永遠にその機会を失ってしまう 」というのは、小さな親切大きなお世話もいいところではないのだろうか。それとも、そうなった場合というのは岡田さんが製造者責任に問われるとでも言うのだろうか。

「いつまでもデブと思うなよ」が単なるダイエット本、あるいはダイエット用具の取扱説明書なら、ああいうアプローチもありだろう。実際合州国でよく見る薬のCMには、一本のCMに三回以上は"Ask your doctor"という文言が聞こえる。

しかし、私はそんなものを同書に期待していたのではない。申し訳ないが、私の体重などそれこそNone of Your Businessである。私がダイエットするのもしないのも、ダイエットに成功するのも失敗するのも、アトキンソン氏の問題でも岡田さんの問題でもなく、私自身の問題だ。私が読みたかったのは、岡田斗司夫という、興味を持たずにいられない個人が、レコーディングダイエットを肴に何を語るかということであり、同書はその期待に見事に答えてくれた。実際同書はグローバル(といっても日本市場だが)でも売れているが、本blogローカルにも売れている。しかし、それは決して本書が「本当に痩せるから」売れているのではない。「岡田斗司夫が面白い」から売れているのだ。

私が見るところ、「いいめも」がレコーディングダイエットを誤解している--というより誤解を幇助している--以上に、岡田さんは自分の読者を誤解しているのだ。そして私見ではあるが、誤読権というのは著作権よりパブリシティ権よりずっと強い権利だ。なにしろそれを担保しているのは表現の自由なのである。そもそも誤読権がないというのであれば、岡田さんがこのような形で読者たちを誤解する権利もないではないか。

私は、それがあると思っているから、今回岡田さんがとった行動は「正しい」と判断している。しかしそれは「間違った」行動よりもずっと価値が低い正しさだ。誤読が価値のレバレッジとして働くことに関しては、私などより岡田さんの方がずっとよくご存じかと思っていたのだが、私は岡田斗司夫を誤読していたのだろうか。

岡田さんに足りないのは権利の確保ではなく、読者に対する信頼ではないのだろうか。

Dan the Man to Err

レコーディング・ダイエットのススメ: 賢明なブログ読者の皆様へ

 以下の文章は「ノーカットで」という条件で引用・転載自由とします。

 『いつまでもデブと思うなよ』、おかげさまで絶好調です。
 正直、「売れるに違いない」とは思っていました。
 というのも、本を発売する前にこのブログでプレビューしている段階から、既に「痩せた!」「すごい!」という人、続出だったからです。
 でも、まさかこんなにすごいスピードで売れるとは思いませんでした。じわじわとネットで評判が広がり、口コミも手伝って、細々とだけどず〜っと売れていくんじゃないかと思っていたのです。

 何しろ、テーマがダイエットです。しかも正攻法。
 ○○ばっかり食べろ式ダイエットや、毎日の根性を要求されるブートキャンプ系などと違い、「1ヶ月で10キロ痩せた!」みたいな極端なデータも出せません。
 地味で正攻法のダイエット本などブームになるわけはない、と思っていたというのが正直なところです。

 若い頃は痩せていた人だって、中年になれば太り始めます。これからも、新規のご贔屓さんが途切れることなく生まれてくるわけです。
 『いつまでもデブと思うなよ』は5年、10年の歳月をかけて売れ続け、やがてはダイエットのバイブルとなる。その頃には、日本中のデブが半減しているのではないだろうか!
 笑われるかもしれませんが、僕は本気で夢見ています。

 だって考えてみてください。こんな作家冥利に尽きることはありません。
 もちろん、何百万人の人々に感動を与えることも、作家としてすばらしいことです。
 でも、その感動は読み終わった瞬間から薄れていきます。「人生を変える一冊」なんて、そうそう存在しません。
 それに比べて、『いつまでもデブと思うなよ』は読み終わった翌日から痩せ始めることも可能です。実用書が持ってる強み、「人の役に立つことによって、その人の人生を変えられる」という作用です。
 僕の書いた本で、やがては何百万人もの人間の人生が変わるかもしれない。
 これって、考えただけでクラクラするほどすごいことですよね。

 しかし、予想外に『いつまでもデブと思うなよ』は売れてしまいました。
 今やテレビや雑誌で「あのベストセラーの」という言葉とともに紹介されるようになりました。他のダイエット本のキャッチコピーが「いつデブ大ブームの裏で、評判になっている新たなダイエット法」と書かれるほどになっています。

 ご存知の方も多いと思いますが、『いつまでもデブと思うなよ』発売から二ヶ月、僕のTV出演は加速度的にふえています。ラジオ出演も雑誌の取材も、とどまるところを知りません。
 ありがたいことです。
 頂いたオファーは可能な限りお断りせず、ひたすらお受けし、こなしています。
 「長い人生の中で、こんなに忙しかったのは始めて」というほどの過密スケジュールをこなしています。
 その甲斐あってか、『いつまでもデブと思うなよ』『レコーディング・ダイエット』という言葉は、誰もが一度はきいたことがある「流行語」になってきています。
 その結果が、このすごい売れ行きに結びついているわけです。

 本当にありがたいことなのですが、良いことばかりではないようです。

 本を買って、ちゃんと読んでくれる人の何十倍もの人が、TVでちょっと見ただけで、あるいは噂できいただけで、ダイエットを開始してしまうのです。
 当然、レコーディング・ダイエットの骨子を理解しないまま、もっとひどい場合は誤解したままチャレンジし、挫折してしまっています。

 ネットを少し検索しただけでもわかります。
・一日1500kcalにすればよい、と考えて、最初からカロリー制限を始めてしまう。
・食べたものを書くだけでよいと思い込み、2〜3日分まとめて書く。
・食べたものは書いているけど、体重を毎日、量っていない。
・運動もした方が良いと考えて、運動に力を入れている。
・とにかくカロリーの高いものは食べられないと、好きなものをガマンする。

 などなど。
 こんな例が、何百も出てきます。
 「これでは絶対に挫折するよ」と、こちらがハラハラするダイエッター目白押しなのです。
 そして、実際に挫折して、それきり「レコーディング・ダイエットもやっぱりダメだったよ」と考える人も出始めています。

 このブログで書いていた頃は、人数も少なく、間違った方法でダイエットしている人には個別に「違うよ」と直接、教えてあげることも可能でした。
 しかしマスメディアに登場してしまうと、そういうきめ細かいフォローができなくなってしまいました。

 TVや雑誌が悪いというつもりはありません。
 TVや雑誌というメディアは、正確に、役立つようにという部分よりも、興味深く、インパクトのある面のみをデフォルメして伝えるという形にならざるをえません。そういう宿命にあることで、面白さを保っているとも言えます。

 実際に『いつまでもデブと思うなよ』を読んでくださった方なら分かって頂けると思いますが、TVや雑誌を見ただけで始めれば、間違うのは当たり前です。
 実はあの本には、「ダイエットを続けるためのモチベーションUPのための仕掛け」とか「はじめるキッカケになる考え方」「途中で止めない仕掛け」とかいろいろ入っています。それを知らないまま始めても、続けるのが辛くなって当たり前なのです。

 本を「買ってほしい」から言っているわけではありません。
 本を「読んでほしい」から言っているのです。
 友達から借りるのでかまいません。立ち読みでもかまいません。図書館でもかまいません。
 幸い、大ブームになったおかげで、どこの本屋さんでも目立つ場所に平積みされています。普段から活字に親しんでない人でも通読できるように、「読みやすさ」に関しては最高の技術を注ぎ込みました。なので、「読みやすい」「すぐ読める」という評判もいただきました。1時間で立ち読みしてしまった、というツワモノもいるようです。
 ぜひ、実際に本を手にとって読んでください。そうすれば、きっと、『いつまでもデブと思うなよ』の考え方の基本姿勢を理解して頂けると思います。

 『いつまでもデブと思うなよ』は、心→体→心→体というキャッチボールで、ダイエットを進めていく方法です。

<心>現状認識をして「痩せたほうが得」「痩せよう」と心で決心する。
 ↓
<体>食事メモと体重記録をつける。
 ↓
<心>食事メモから、そんなに食べたくないのに食べていたものを知る。
 ↓
<体>食べるものをメモしただけで、体重が減りはじめる。
 ↓
<心>体重が減った喜びを感じ、もっとやせようと決心し、カロリー制限を始める。
 ↓
<体>順調に痩せ続ける。
 ↓
<心>痩せた喜び=ダイエットへのモチベーションに繋がり・・・
 ↓
・・・・・・

 という感じで、このあとも、好きなものを食べられなくて<心>が辛くなれば、好きなものを食べながらいかに目標カロリーに近づけるか工夫したり、体重が減るのが当たり前になり痩せる喜びが減ってきたら、痩せる喜びを思い出す方法を編み出したりします。
 やがては、満腹感や空腹感という感覚を研ぎ澄まして、自分の体が要求する分量を食べられよう訓練します。
 そういう工夫や具体例が、ぎっちり詰まっている本でもあるのです。

 ぎっちり詰まっている分、短い要約ですべてを伝えるのは、大変難しいとも言えます。
 たとえば、今回皆様をお騒がせした『いいめもダイエット』というサイトも同じ間違いを犯しています。
 『いいめもダイエット』の問題点は、「いま評判になっている『レコーディング・ダイエット』というのは、カロリー制限することだ、と誤解させる構造になっていたこと」です。

 TVを見た人が、『岡田斗司夫』や『レコーディング・ダイエット』『いつまでもデブと思うなよ』で検索して、『いいめもダイエット』のページにいくと、ほとんどの人が「これがあの噂のダイエットだな」と思うに違いありません。
 僕の名前が出ているんですから、お墨付きだと思われても、早とちりと非難できません。
 でも、単なるカロリー制限法のダイエットを開始しても、続くはずがありません。
 まずいことに、最初の数週間なら、カロリー制限だけで痩せる人も案外多いのです。みなさん、僕よりよほど根性があるんですね。けれど、どんなに根性のある人も、途中で行き詰まり、結局ダイエットを放棄してしまうのは目に見えています。
 その結果、「レコーディング・ダイエットもダメだった」と、誤った認識を持ってしまいます。
 もし、ちゃんと本を読んで正しい順番ですすめていれば痩せられた人が、永遠にその機会を失ってしまう。
 たとえレコーディング・ダイエットに成功した人から薦められても、「あぁ、あれやってみたけど、オレにはダメだったよ」ということになってしまうのです。
 その人が痩せるチャンスは、永遠に奪われてしまいます。

 『いいメモダイエット』のサイトを作った方が、わざと間違えたとは思いません。
 僕の本を読んで、実際にダイエットしてくれたのだろうと思います。そして、他の人にも、このダイエット法を伝えようとしてくれたのでしょう。
 実際、『離陸』段階に入れば、こういう機能を持つサイトは役に立つと僕も思います。
 けれども、僕なら「助走用」「離陸用」「巡航用」「最加速用」・・・とフェーズごとに記録用ページをデザインしたいと思います。
 各フェーズによって、記録するべきことが違うからです。

 でも『いいメモダイエット』は、もともとあった「いいメモ」の機能の上に、カロリー計算を乗っけただけなので、そうはできなかったようです。あるいは、フェーズがあることはわかっていても、段階を踏む大切さの認識が甘かったのかもしれません。
 もし今の僕に時間があれば、『いいメモダイエット』のサイトを共同開発しても楽しかっただろうな、と思います。凝り性なので、相当こだわった良いサイトができそうな気がします。
 が、残念ながら、現在僕は、さっきも説明したように多忙を極めています。
 どれくらい多忙かというと、過労で倒れたらどうしよう、というのが、今の僕の一番の不安というほどです。たとえ過労で倒れても「岡田斗司夫、無理なダイエットでダウン!?」などと言われかねませんし。

 でも、ダイエットしたおかげか、体調はすこぶるいいです。ひたすら、TVや雑誌の取材に答えています。
 たとえ不十分でも、僕が僕の言葉で説明することで、「レコーディング・ダイエット」を少しでも多くの人に知ってもらいたい、と考えているからでもあります。だから今のところ、この忙しい状況から逃れられないとあきらめています。

 そんなわけで、残念ながら「いいメモダイエット」のサイトには、『岡田斗司夫』『レコーディング・ダイエット』『いつまでもデブと思うなよ』といった言葉を使われると誤解されるし、お墨付きという誤ったイメージもつきかねないから、と強く抗議したわけです。

 と、事実経緯をここまで説明した上で、皆さんにお願いがあります。

 僕がどんなにテレビや雑誌取材で言葉をつくしても、『いつまでもデブと思うなよ』を読んでくれない人はたくさんいます。
 活字だらけの本なんか読みたくない。読むのは雑誌くらい、という人が大勢いるのから、仕方がないことです。
 そんな人たちが大勢いるからこそ、このブログをいつも見守ってくれている賢明な皆さんに、是非、お手伝い頂きたいのです。

 本を買わない人も、ネットはします。
 みなさん自身のブログを覗きに来る人も多いでしょう。
 そういう人たちのために是非、「TVで見ただけ、雑誌で読んだだけで、始めちゃうとうまくいかないよ」と教えてあげてください。
 「立ち読みでもいいから、読んでみて」と言って頂ければと思います。
 全部読むのは大変なら、ぜめて「助走」「離陸」だけでも読んでから始めるように、教えてあげて欲しいのです。
 ありがちな間違いのパターンを紹介して頂くのも効果的かもしれません。

 現代社会では、ネットはテレビなどのマスコミで流れた情報を確認し、さらに深める役割を担っているように思います。「続きはネットで」という考え方も定着しているようです。
 おそらく、テレビや雑誌で報道されたレコーディング・ダイエットに関して、ものすごく多数の人がネットで追加情報を検索していると思います。
 みなさんのブログに行ったときに、そういう追加情報を読みやすい形で教えて頂ければ、と切に思います。
 もし、他の人のブログで、「レコーディング・ダイエット」を誤解した表現が見つかったら、やさしく教えてあげてください。「間違ってるよ。ここを見て!」と、僕のページや、もっとちゃんと説明してるサイトへリンクをはって頂くだけでもかまいません。

 「なんで、そんなことをオレが?!」と思われるかもしれません。
 でも、ネット社会においては「書き手」はすでに「表現者」であり、時には「指導者」の役割すら負わされます。
 望む・望まざるにかかわらず、みなさんには「ある種の社会的責任」が発生していると思うのです。正直なところ。

 どうか僕と一緒に、一人でも多くのダイエットの成功を手伝ってください。
 一人でも多くの人生を変えてみせようじゃありませんか。

 ただし、痩せた人はあんがい、僕たちに感謝してくれません。
 なにしろ、痩せた人たちにしてみれば、痩せたのは本を読んだためではありません。みなさんの説明によってでもありません。レコーディング・ダイエットを自分で実行したから、痩せたわけですからね。
 痩せた人は、それぞれが自分自身の努力と成果を誇らしく思うだけでしょう。

 それでいいのです。
 感謝されるわけでなく、覚えてくれるわけでなく。心ひそかに「日本の肥満人口を半分にした」という自負ぐらいしか得るものはないかもしれません。
 でも、「死ぬほど辛い」と言われる治療法を受けなくてはいけなくなる糖尿病予備軍から、一人でも多くの人を救えるかもしれません。心臓病や突然死で一家の働き手を失い、絶望へ追い込まれる家族を救えるかもしれないのです。

 ネット市民であるみなさんにとって、「積極的なネット社会参加者でない人たちのために何かする」というのは、気が進まないかもしれませんね。
 まぁ、そこはそこ。
 大きな心で「自分とは無関係の大勢の人たち」の幸せのために、ちょっとだけがんばりませんか?
 巨大ロボットを操縦するヒーローにはなれなかったけど、こういう「誰も知らないヒーロー」を目指すのも、アリだと思いませんか?

 長い文章を最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

2007年10月25日 岡田斗司夫