残念ながら、これを全ての人に実施するほど人生は長くない。

良い人間関係を築くために知っておくべき心理学の基礎 - モチベーションは楽しさ創造から
部下や後輩のモチベーションアップを考える前に、当然、彼らとの良い人間関係作りを行う必要があります。「あの後輩とはなかなか馬が合わない」とか、「あの上司はとにかく嫌い」などといって、人間関係を避けていても、何も前に進みません。

人間関係のために、一人につきわずか一秒割いたとしても、全人類に行き渡らせるには二世紀以上かかるのだ。

イヤな人でも、人間関係作りは、不可欠なテーマなのです。

これは残念ながら嘘ではない。イヤでもつきあわなければならぬ人というのは、誰でも一人や十人はいる。例えば子供にとっての親というのはそういう存在であろう。

しかし、親ですら一生つきあわねばならぬ人ではないように、人間関係というのは幸いなことに永遠ではない。気に入った相手とより親密になり、気に入らぬ相手とより疎遠になる。誰もがこうして人間関係を整理して行く。いつもは繊細に、時には大胆に。

人間関係においては、よい人間関係を構築することもさることながら、悪い人間関係を清算する、もしくは悪い人間関係をはじめから構築しないということが、年を重ねるごとに重要になってくる。よい人間関係の構築に関しては引用元に任せて、ここでは悪い人間関係対策を論じることにする。

  1. 返報性

    毎日我々の元には、物理的にも電子的にも「よい人間関係」を築こうとする勧誘に溢れている。不動産屋はチラシでよい物件をとおしてよい人間関係を構築しようとしているし、出会い系サイトはスパムでよい異性紹介をとおしてよい人間関係を構築しようとしている。これらのすべてとよい人間関係を構築しようとしたら、財産と時間がいくらあっても足りない。

    よって、ここでは「これらのほとんどを無視」するというのが、悪い人間関係を増やさぬための対策となる。最近では、この返報性につけ込んだ人間関係の押し売りこそが問題となっている。声をかけられると思わず返事したくなるのが自然の心理であるが、現代にあってはこれは極力抑えるようにしておいた方がよいだろう。

    「一見さんお断り」ぐらいをデフォルト値にしておくのがよい加減かもしれない。

  2. 偏向の盲点

    「悪い人間関係を貯めない」基本フィルターが、これである。このフィルターの感度を上げすぎれば、よい人間関係を築くチャンスを見逃してしまうし、かといって下げすぎては人間関係過多に陥ってしまう。

    どのあたりに「落としどころが」あるかを人様に語るほど、私は心理というものを知らない。しかし、この色眼鏡が、自分だけではなく人からも見えるということは、指摘しておく価値がある。自分がどんなものを見ているかは、人に伝わってしまうものなのである。

    嫌韓厨の眼鏡をかけている人のところに韓国ファンは近寄らないし、メールショーヴィニストの眼鏡をかけている人のところにフェミニストは近づかない。当然といえば当然なのであるが、時に人は自分がどんな色眼鏡をかけているのか忘れてしまう。

    よい人間関係を築こうと思っている相手があなたを避けている場合、真っ先にチェックすべきは自分がどんな色眼鏡をかけているかをチェックすることだろう。

  3. 理屈より好き嫌いの感情

    なぜ理屈より好悪の感情の方が決断において重要な役割を果たすことが多いのだろうか。

    それは、時間と情報である。理屈はそれを吟味するのに充分な時間と、それを判断するのに充分な情報があってはじめて「正しい」結論を導く。残念ながら決断が必要な場面のほとんどにおいて、そのどちらも足りない。

    「感情でものごとを判断するな」という人はあまりに多いが、それは決断というものを知らぬと言っているも同様の書生論である。むしろ私は「理屈でものごとを判断できるほど暇な人などほとんどいない」と答えることにしている。

    それでは理知的な判断が出来ないか、というと、それも違う。そうするためには、感情を理性でデバッグしてやればいい。決断には、当然結果が伴う。その結果を見た上でこうしておくべきだったという反省は、まさに理性の仕事だ。しかしそれを次の決断につなげるためには、理性の判定を感情にフィードバックさせなければならない。

    感情は、変更不可能なものではないのだから。

  4. おなじみ効果

    人は「おなじみに弱い」というよりは「知らぬものに対する恐れが強い」とするべきなのだろう。定番は「おなじみだから強い」のではなく「恐れを払拭するコストが低い」のである。

    よって、馴れ合いを避けるためには、相手が変わることを期待するより、自分が変わる方が手っ取り早い。相手が自分に払うコストを、相手に自分が払うコストに先んじて上げてしまうわけである。

    もちろん、上げすぎた場合には「人間関係最適化」どころか「人間関係破綻」のリスクが伴うのは言うまでもない。

  5. ハード・トゥ・ゲット・テクニック

    なぜ浮気者が嫌われるかという理由がこれ。「あなただけに言う」場合、実は「あなた以外にも言っていることがばれるリスク」というのを我々は過小評価しがちだ。Hard to get は Easy to loseでもあるのだ。

    私はそれがこわいので、なるべく「あなただけに言う」は使わないようにしている。私がSNSよりblogを重視している理由の一つがこれかも知れない。「みんなに言って」しまえば、「私だけに言ったんじゃないの?」と言われるリスクとは無縁なのだから。

  6. ローボールテクニック、フットインザドア

    ローボールテクニックは、金貸しの常套手段。なぜ安易にローボールを受け取ってはいけないかという理由は、それで充分だろう。

    そして世の中のスパムというのは、まさフットインザドア。

    この二つは、よく知られたテクニックであるがゆえに、今ではむしろ率先して避けた方がいいかも知れない。むしろ最初にリスクをきちんと説明した方が、信用するに足る人物と受け取られる可能性の方が高くなってきたのだ。「俺はノンケでもかまわず食っちまう男なんだぜ」というのは、ハッテンする前に言うようにすべき。

  7. ピグマリオン効果

    この「相手への期待」というのは、実にさじ加減が難しい。期待が少なすぎれば相手は期待されていることすら気づかず、多すぎれば相手には過度のプレッシャーとなる。

    実はこの点に関しては、先ほど「現代では悪手」とされるローボールが活きてくる。ただし、投げ入れるのは、相手へのリクエストではなく、相手への期待。いきなり「君に社運をかけている」は駄目。まずは低リスクのリクエストと、それを少し上回るぐらいの期待を投げ入れるのがちょうどいい。

    その逆のゴーレム効果は、人間関係の清算に使えそうであるが、これはやめておいた方がいい。人間関係の清算にあたってやりたいのは、あくまで相手の「他人化」であり、相手を敵にすることではないのだから。

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