すばらしい。

今年のノンフィクションアンソロジーベスト1最有力候補。

本書「〈はかる〉科学」は、〈はかる〉ことに関して、12人の「ハカリスト」たちが語ったノンフィクションアンソロジー。サブタイトルの「計・測・量・謀…はかるをめぐる12話」を見てもわかるとおり、古今東西どころか文理形而上下まで、〈はかる〉づくしの一冊である。

目次
はじめに阪上 孝
第1章はかることの革命 - メートル法の成立阪上 孝
第2章キログラムの再定義 - 単位の普遍性をめざして藤井 賢一
第3章環境をはかる - 一技術者の立場から瀬田 重敏
第4章アフォーダンスという単位 - 肌理と情報佐々木 正人
第5章古代シュメールでどのように土地が測られ、穀物が量られていたのか前川 和也
第6章風水で国土をはかる - 気と脈であらわす朝鮮の古地図 「大東興地図」の表現と思想渋谷 鎮明
第7章空からはかる - 考古学とリモートセンシング渡部 展也
第8章身体から都市へ - 空間をはかるル・コルビジェ後藤 武
第9章音をはかる - 音響学の歴史的変遷橋本 毅彦
第10章"美"をはかる - 音の文化的諸相をめぐって藤井 知昭
第11章罪の重さをはかる - ダンテの「神曲」地獄篇にみる罪と罰山川 慶兒
第12章メタファーで世界を推し量る - 認知意味論の立場柳谷 啓子
おわりに"はかれれないこと"に注がれる人間の情熱長島 昭
著者紹介

これだけさまざまな〈はかる〉があれば、どれか一つくらい手に取って「はかって」みたくなる項目が存在するだろう。実際、自然科学における「計測」に関してだけでも、「超精密計測がひらく世界」が新品で入手できない今となっては本書は貴重である。

その一方、これだけ〈はかる〉があると、「眼鏡にかなわない」「はかる」も一つや二つや三つや四つはあるだろう。しかし、こういう具合に「自分にはかれるもの」と「自分にはかりがたいもの」が同居しているというのはじつにいい。もちろん自分に得意な章から読んでもいいのだけど、折角一冊にまとまっているのだから、自分がさっぱり知らなかった分野にも手をのばしてみるといい。本書なら、ページをめくるだけなのだから。

個人的な不満は、「罪の重さ」が「神曲」にしかなされていないこと。これ、すごい面白い一章だったのだけど、しかし現代人としては、散文的な、法における量刑に関する一章が欲しかったと思う。本書は880円。どうせならもう3章増やして1000円ぎりぎりを狙ってきて欲しかった。

とはいえ、「はかる12点盛り」はこれだけでもかなり「おなかいっぱい」になれるのも事実。コストパフォーマンスはピカ一です。

Dan the Hakarist