ダイヤモンド社より献本御礼。
世の中にはすでに金融商品以上に金融商品本があふれているが、その中にあっても「スタバではグランデを買え!」の著者というブランドは大きい。
- はじめに ぜ〜んぶ、ウソ!
- 第1章 最近流行している『危ない金融商品』のポイント解説
- 基本的に、金利は物価上昇を反映して決まる
- 満期を銀行が選択できる預金 〜中途解約すれば、大損する!
- 外貨建の個人年金保険 〜国債と比べて評価すべきだが?
- 元本保証型の投資型年金保険 〜無意味な保証のために機能が大幅に劣化
- 外貨預金の高金利キャンペーン 〜年率表示のトリック
- 二重通貨預金 〜損をするためにだけあるような預金
- 条件つきで元本を確保する株式投資信託 〜株価暴落は例外的な現象か?
- 第2章 インフレに強いのは、意外にも、古くからある普通預金
- 普通預金と定期預金は、どちらが有利か?
- 個人向け国債は民間金融機関の敵
- 元本保証型の投資型年金保険はインフレに弱い
- ふつうの高齢者にも外貨運用は必要か?
- 日本にインフレが来るとしたら?
- クイズ 左右どちらの預金が有利?
- 第3章 高金利で元本保証で、しかも金利がステップアップする円定期預金
- 銀行が選択権をたくさん持つほど、客には不利
- 一番短い満期で終わるのが、客にとって最善の結果
- 勝ち負けをまったく反対に伝える、デタラメな説明
- 金融機関が操るマジックのタネ明かし Part1 オプションと先物のしくみ
- オプション取引とは「売買の権利」の売買
- 売り手になるほうが魅力的?
- オプションを組み込んだ金融商品の「隠れた手数料」は異常に高い
- 先物取引は現物取引に借金を組み合わせたもの
- 先物やオプションの取引では、円高が予想されている
- 第4章 よほどの不運に見舞われない限り、高金利が得られる債券
- ITバブルの際に大流行したEB債・日経平均リンク債
- ぼったくり金融商品は、何度でも復活する
- 第5章 ふつうより有利な条件でスタートできる外貨預金
- オプションの売りを組み込んだ外貨預金
- メリットは小さく、しかもコストですべて吹き飛ぶ
- 富裕層向けの金融商品もぼったくりがひどい
- クイズ 左右どちらの預金が有利?
- 第6章 元本は円建で安全で高金利なのに、円安でさらに金利が上がる預金
- さらに複雑化する金融商品
- 満期に関する選択権は、とにかく強力に作用する
- 金融機関が操るマジックのタネ明かし Part2 円相場の性質
- 短期では金利、長期では物価が円相場を左右する
- 日本の金利が低いと、円安になるのか、円高になるのか?
- 第7章 大学や地方銀行などが喜んで買い、個人なら富裕層しか買えない債券
- 公益性の高い法人がおこなっている危険なギャンブル
- 財務担当者の心理と、予想のズレを巧みに利用した金融商品
事例は前著「金融広告を読め」の方が豊富だが、本書の方が解説も丁寧かつ平易で、吉本佳生名物「ニセ広告」もこちらはカラー。今薦めるのであればやはりこちらということになる。新書ではないのでその分高いが、それでもアマゾンプライスどんぴしゃりで一冊から配送料無料。「金融商品本これ一冊、でも読書の時間はほとんどない」というヒトにまさにうってつけの一冊だ。
ちなみに1,500円というのは、金利1%だと15万円分の年利に相当する。0.1%でも150万。授業料としてはずいぶん安い。しかも本書なら、著者のネームバリューもある程度あるので、金融機関の窓口に行くとき本書を手にしていればある程度の牽制球になる--かもしれない。
とはいうものの、私自身は金融商品本は少し食傷ぎみでもあり、また本書の体裁は過去の著者の手による本よりも、他の金融本に体裁がより似ている。とくに「投資信託にだまされるな!」とは似ている(といっても「ニセ広告」のオリジナリティは著者の方に軍配が上がる)。それもあるので楽しめるという点では「スタバではグランデを買え!」の方をむしろ推す。著者もやっかみぬきでずいぶんとおいしいポジションを獲得したものだと思う。
Dan the Economic Animal
小学生レベルの四則演算だけで金融工学を解説するという趣旨の本で、実際それに成功していることに驚いた記憶があります。
しかし、アマゾンで著書のリストを見ると、この方の本はユニークな題名のものが多いですね。