The 2,3 turing machineが出たときに紹介しようと思っていたらなんだかんだで後回しになってしまった。
私はこれまで全てのページに少なくとも3度以上目を通した。
が、とても「読了」(read)したとは言えない。せいぜい「目を通した」(browse)したといったところか。
それでも紹介せずにはいられない魅力がこの本にはある。
本書"A New Kind of Science"は、超天才Stephen Wolframの単著。いや、涼宮ハルヒが超天才なら、こちらはもう神としかいいようがない。
といっても、知名度ではいまいちかも知れない。少なくとも妻は知らなかった。ここで改めてWikipediaに紹介してもらおう。本書の著者紹介からコピペして抄訳したのではないかというぐらい似ているので。
スティーブン・ウルフラム - Wikipediaスティーブン・ウルフラム(Stephen Wolfram、1959年8月29日 - )はアメリカのWolfram Research社の創業者で最高経営責任者。また、理論物理学者でもある。
15歳にして素粒子論の学術論文を執筆し、オックスフォード大学を17歳で卒業。その後カリフォルニア工科大学(CalTech)に進み、高エネルギー物理学、場の理論、宇宙論の研究を行った。20歳で理論物理学の研究により、カリフォルニア工科大学においてPh.D. の学位を取得。
これだけすごい人なら、「なぜ私はHawkingやPenroseを知っているのにWolframを知らないのか」という人もいるかも知れない。しかし、そういう人も、Mathematicaというソフトウェアの名前は聞いたことがあるかもしれない。そう。著者はMathematicaを世に送り出した、Wolfram Research, Inc.の創設者にしてオーナーでもあるのだ。Mathematicaのコア開発者でもあることは、社名を見るまでもない。
そして今(といっても出版当時)どうしているかというと、
From the Book CoverOver the past decade Wolfram has divided his time between the leadership of his company and his persuit of basic science.
これだけ好きを貫き通しすぎて好き放題やっている天才を、他に上げろと言われても返答に窮する。
そういう人が、「公私融合」し、虎の子のMathematicaも総動員して書き上げたのが、本書なのである。
目次Preface The Key Ideas of A New Kind of Science Chapter 1 -- The Need for a New Kind of Science Chapter 2 -- The Crucial Experiment Chapter 3 -- The World of Simple Programs Chapter 4 -- Systems Based on Numbers Chapter 5 -- Two Dimensions and Beyond Chapter 6 -- Starting from Randomness Chapter 7 -- Mechanisms in Programs and Nature Chapter 8 -- Implications for Everyday Systems Chapter 9 -- Fundamental Physics Chapter 10 -- Processes of Perception and Analysis Chapter 11 -- The Notion of Computation Chapter 12 -- The Principle of Computational Equivalence Epilog: The Future of the Science in this Book Notes on All Chapters
この本書でWolframが紹介し、証明に懸賞金をかけていたThe 2,3 turing machineが肯定的に証明されたのがご存じのとおり。彼はその証明に対し$25,000を支払った。知力も財力もある人なのである。
そういう人であるから、読者に遠慮はしない。本書は1,200ページ。まずこの厚さに圧倒される人が少なくないだろう。ページ数だけならこれに匹敵する本は、特にIT関連には少なからずあるが(我らのラクダ本もそうだ)、本書は図版も多いこともあって、ラクダ本のように薄く丈夫な紙を使って軽量化ということもしていない難しい。本書は重さ2kg。本blogで紹介した最高価格本である「オックスフォード・サイエンス・ガイド」にひけを取らない。
ページ数だけならまだしも、1ページ1ページがやたら濃い。同じ超天才の本でもPenroseのそれはかなり緩急つけているので以外とすんなり読めるが(特に"The Road to Reality"はそう)、こちらはそうも行かない。10tトラックで200km/hでぶっとばしているようなおそろしさだ。
これでまるっきりわけがわからないのであれば、「おととい読みやがれ」といったところなのだが、ところがこれが面白いのである。とくにTuring Machineがらみのところは、「人智を超えたシンプルさゆえに難しい」ところがあり、ギークであれば食いつかずにいられない。
太っ腹なことに、本書はWeb版も出ていて、全てのページをオンラインで読むことが出来る。しかしこれだけははっきり言える。本書を眺めるのでなく読むとしたら、両方必要だと。Webだけだと脳の前に目がやられる。本だけだとコードが追えない。Web以前の時代だったら、文字通り本書の角に頭をぶつけて死ねる。
にも関わらず、本書は実に安く買えるのだ。以前はもっと高かったのだが、今ならAmazonで4,826円。5,000円でおつりが来るのだ。ありえない。本書そのものがセルラーオートマトンで自己複製しているとでもいうのかWolfram。
読書会やりたいなあ....でも各自持ち込みとなると、重さで躊躇しそう....
Dan the New Kind of Reader
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